二枚舌を使い分ける警察

検事から弁護士に転身すると、いろいろな物事を、別の観点から見ることができて、なかなかおもしろいが、おもしろくなく、あきれることが多いのが、「検察庁」に関する警察の二枚舌である。
検事の立場にいると、警察からいろいろな相談を受けるなど、警察と接する機会が多いが、彼らは、何だかんだと、とかく自分たちの独自性を強調しようとする。公判維持の観点から、補充捜査を依頼しても、なかなか気持ちよくはやらない場合が多い。「警察は独立した捜査機関」などと、よく口にもする。
ところが、である。
弁護士が警察に対し、いろいろな働きかけをした場合(おそらく弁護士以外にも同様の対応をしていると推測するが)、彼らは、自分たちの省力化、責任回避のために、検察庁を、相当、便利に使っているのである。「それを検察庁に言っても理解してもらえませんよ」、「検事だ駄目だと言ってるんですよ」、「検察庁に相談したんですよ」などと、本当に「便利に」使っていると思うことが少なくない。「自分たちは、検察庁から指示されて動いているだけだ」といった体裁をとることで、面倒なことに関わらないようにしている場合が多い。そういう場合、「私たちは独立した捜査機関なので、頑張ります」といった姿勢はない。巧みな二枚舌(もしかしたら三枚、四枚、五枚と使い分けているのかもしれない)である。
本人達は、検事は検事を続け、弁護士は元から弁護士で弁護士を続け、という幼稚な意識で、カメレオンが体の色を変えるように、二枚舌を使い分けているつもりかもしれないが、接する人々が、そんな二枚舌を見抜けない人ばかりではない、ということは覚えておいたほうが良いし、気をつけないと、自分たちにとって致命的なことすら起きかねないことも、覚えておいたほうが良いと思う。
二枚舌を使い分ける(使い分けているつもりの)カメレオンのような人間には、ろくなことはないものである。