正式の受理とは

コメント欄で質問があったので、若干、補足しておきます。
私は、検察庁出身なので、検察庁を例にとると、告訴状を提出しようとする人がいた場合、告訴状としての形式要件充足の有無や、告訴の対象となっている犯罪事実が特定されているか、記載事実が認定された場合に犯罪が成立するか、といった諸点をチェックすることになります。
こういった諸点を確認するために、とりあえず「預かる」ということはあり得ますが、預かりっぱなしで放置、ということは厳に慎むように指導されているはずです。
上記のようなチェックを経て、要件を一通り満たしていれば、正式受理という運びになり、告訴状を含む一件記録には、受理印が押されるはずです。
正式受理されると、事件番号が付与されます。検察庁では「検番」と言っていると思います。「平成○○年検第○○○号」という形で、起訴状には通常記載されています。
正式受理後、事務手続を経て、担当検察官が決まり(「配点」と言います)、その人のところに記録が行って、以後、担当検察官(「主任」検察官)が捜査を担当することになります。
正式受理された事件は、事件番号を頼りに、常に組織内部で把握されることになりますが、逆に言えば、正式受理されずに、誰かのロッカーとか引出などに入れられて放置されたりしていると、組織としての管理が行われていないことになります。忙しさの中で、そういった記録が、他の記録に紛れてしまったり、間違って捨てられたり、といったことが起きがちで、最悪の場合、代替性のない証拠や書類がなくなったり、時効が完成する、という、目も当てられないようなことも起きる場合があります。
以上は、検察庁を例にとった説明ですが、裁判所でも、警察でも、細部等は異なっていても、大体同じような取扱いが行われているという理解で、それほど間違いはないはずです。
正式受理は、記録に残ることを意味し、組織として管理されている事件は、処理して「落とす」必要があり、いつまでも落とさず持っていると「未済」事件ということで、落とせ落とせとプレッシャーがかかりますから、正式受理したくない、未済事件を抱えたくない、という動きが、常に出て、正式受理して積極的に動いてほしいと希望する人々との間で、攻防が繰り広げられることになるわけです。