http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120718-00000107-mai-soci
大津市で昨年10月、市立中学2年の男子生徒(当時13歳)が自殺した問題で、男子生徒の父親が18日、いじめの加害者として同級生3人を暴行や恐喝、強要など六つの容疑で滋賀県警大津署に告訴し受理された。
告訴で父親は容疑を暴行に絞らず、県警担当者に口頭で被害の内容を伝える形で「告訴調書」を作成した。その際、昨年12月の被害届は事実上の告訴にあたると主張し、告訴期間の過ぎている容疑も含めて告訴したという。
刑事訴訟法241条は、1項で、「告訴又は告発は、書面又は口頭で検察官又は司法警察員にこれをしなければならない。」とし、2項で、口頭による場合について、「検察官又は司法警察員は、口頭による告訴又は告発を受けたときは調書を作らなければならない。」としています。この「調書」が、「告訴調書」と言われるものです。ただ、通常、告訴を口頭で行い受ける、ということは少なく、告訴状という書面による場合がほとんどで、本件のような告訴はかなり珍しいと思います。私自身、検察庁にいた当時、告訴調書というのは、1度か2度、見たことがあるかな、という程度ですね。
ちなみに、刑事訴訟法235条では、一定の例外を除き、「親告罪の告訴は、犯人を知つた日から六箇月を経過したときは、これをすることができない。」としています。現在、問題となっている犯罪の中では、器物損壊罪が親告罪で、形式的には犯人を知った日から6か月以上経過後の告訴になると思われますから、上記の記事にあるように、昨年12月の時点で(まだ犯人知った日から6か月は経過していなかったのでしょう)告訴をした、という考え方に基づいて、今回はそれを確認した、という捉え方を、告訴人側はしているものと思われます。本来の被害者は亡くなった生徒さんですが、刑事訴訟法231条2項では、
被害者が死亡したときは、その配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹は、告訴をすることができる。但し、被害者の明示した意思に反することはできない。
とされ、直系の親族である親が告訴した、ということになるでしょう。
警察は、被害届や告訴、告発を受理すると仕事が増え面倒なので、難癖をつけたり放置したりして、極力受理しないようにするものですが、本件は事案があまりにも深刻で、警察の緩慢な対応に対する国民の批判も日増しに高まっている状況なので、おそらく警察庁の意向もあって、異例な口頭による告訴受理、という対応に出たものと推測されます。今後の捜査の行方に注目する必要があるでしょう。