刑事弁護の売上

今、「刑事専門弁護士」に、仮になった場合、どこに収入源を求めるか、かなりの難問でしょう。
刑事事件の被疑者、被告人になるような人で、継続的に事件を起こしお金もある、というのは、まず、暴力団です。時々、暴力団事件を多く受任して、刑事が専門化している弁護士がいますし、それなりにお金にもなるようですが、明けても暮れても暴力団員の弁護、ということになると、魅力を感じない弁護士も多いでしょう。暴力団犯罪には、特有の「落とし穴」もあるので、注意しないと、気が付いたら弁護士も塀の中、といったリスクもあります。
地方の場合は、弁護士の絶対数が少ないので、「刑事専門」といった看板をかけることにより、ある程度、事件を受任できる可能性はありますが、大都市に比べて事件数自体が少ないし、そこまで専門化するモチベーションが持ちにくいので(普通に民事事件などをやればそれなりに収入も得られる)、やはり、難しいように思います。
依頼者からお金がもらえそうなのは、脱税事件とか、贈収賄事件、談合等の事件、特殊な業務上過失致死傷事件(工場の爆発とか)等ですが、次々と起きるわけでもないので、そういった「お金になる」刑事事件を継続的に受任する、というのは、不可能ではありませんが、簡単ではないでしょう。
そうすると、国選弁護とか当番弁護士とかをできるだけやって、数をこなすか、ということになりますが、国選は1件あたりの単価が安く、当番弁護士も、それほどお金がもらえるような事件はないので(これは私の実感)、やはり、それだけでやってゆくというのは難しいのが実状です。
こういった事情があるので、日本では「刑事専門弁護士」という人がほとんどいない、ということになります。
日本の刑事事件の場合、無罪判決(一部無罪を含む)の獲得、という華々しい場面はほとんどないので、国選弁護を一生懸命やって名が売れて依頼者が増える、ということは期待しにくいでしょう。裁判所や検察庁の関係者は、刑事事件のプロなので、優秀な国選弁護人がいると、高く評価してくれるかもしれませんが、そういった人々に高く評価されても、依頼者増加には結びつかないですね。