国選弁護

以前、ドラマで国選弁護人を主人公にしたものがありましたが、実際の国選弁護というものが、どんなものなのか、少し紹介しておきます。
国選弁護人は、通常は被告人の請求により(職権の場合も時々あります)裁判所によって選任されます。選任にあたっては、まず弁護士会に、事件に関する簡単な資料(起訴状等)が送られてきて、それに基づいて、弁護士会が弁護士を推薦する、という形になっています。
選任後は、弁護人として弁護活動を行うことになります。事件により、行う内容は様々で、非常に手間のかかる事件もあれば、比較的簡単に終わる事件もあります。正に千差万別です。
問題になるのが、弁護人に対する報酬です。一般的には、「安い」と言われていますが、確かにそのとおりでしょう。
私の場合、他の業務との兼ね合いもあって、公判に時間がとられない控訴審の国選弁護を引き受ける場合が比較的多いですが、通常は、選任後
1 裁判所で一件記録を検討
2 被告人と接見の上打ち合わせ
3 控訴趣意書の作成、提出
4 公判へ向けた準備(書証の準備、被告人との打ち合わせなど)、事実取調請求書の提出
5 第1回公判
6 判決
といった流れで手続が進みます。
事件により、時間のかかり方は様々ですが、1件あたりの弁護人に対する報酬は、8万円から9万円の間くらいで、ほとんど変わりません。
やっていて実感するのは、報酬の基本的な計算方法は現状でやむをえないとしても、手間がかかり時間を取られるような事件(典型的なのは死刑事件)では、計算方法を変えて、それなりの報酬が支払われるようにしないと、そういった「重い」事件の引き受け手がいなくなってしまう、ということでしょう。
私の場合、検察官の目で見るのとは違った目で刑事事件が見られることなど、興味を感じて国選弁護をやっている面があるので、報酬についてはほとんど気になりませんが(時々、「安いなー」と感じることもありますが)、「ビジネス」といった目で見ると、割に合わない面が多いのは事実でしょう。少なくとも、一般的に言って「魅力ある仕事」という感じではありません。
ただ、刑事弁護は、地味ではあっても重要性のある仕事で、こういった仕事をこつこつと行う弁護士というものも必要だと思います。
東京地裁の場合、若くて未熟な裁判官や書記官がいて、国選弁護人に対し見下したような態度をとる場合がありますが、東京高裁の場合、さすがに、そういったことはほとんどなく、地裁と高裁の落差を感じることがあります。