「なぜ日本は没落するか」

 

1990年代の後半に出た本ですが、興味を感じ、通読してみました。著者は著名な経済学者で、既に故人です。

論旨が様々に展開し、著者の言わんとすることにはわかりにくさも感じましたが、戦後、世代交代を経て1990年台後半に達し、バブル経済も崩壊していた日本が、様々な制度疲労を起こし行き詰まって、2050年には相当に没落しているであろうと予想していた、その慧眼には、その後、約30年が経った今、鋭さを感じました。

感じたのは、やるべきであったこと、やらずに来たことは、日本社会、経済の徹底的な構造改革であったということです。著者は北東アジア共同体構想を本書で述べますが、それもそういう趣旨でしょう。欧州のEUのような北東アジア共同体が形成されていれば、現状のような深刻な人手不足に有効な処方箋が書けたかもしれません。バブル崩壊後、漫然と過ごしてきたツケが回っている今、本書を読んで、改めて現状の深刻さ、何もしてこなかった年月の虚しさを感じました。