「ドキュメント 道迷い遭難」

 

この著者の出しているノンフィクションは、なかなかおもしろいのですが、これも読んでみました。

私自身は山登りをしないのですが、知人で山登りが好きな人は何人もいますし、山中で迷って救助されたとか行方不明になり死亡したといったニュースもよく目にします。それだけに、様々な実例が紹介されている本書は、参考になり興味深いものがありました。

著者が述べるように、道に迷いかけたら元来た道を引き返す、迷ったら沢には降りない、といったことを守れば、重大な遭難にはつながらないでしょう。しかし、そこが人の心理の難しいところで、希望的な要素に引きずられてしまったり、先に付近を歩いた人が付した目印に幻惑されたりと、定石通りに進まないところに遭難事故が起きてきます。当たり前のことが当たり前に進行すれば事故は起きないはずという意味では、こういった山での遭難も、様々な状況が複雑に絡み合う中で起きるものなのでしょう。

我々の人生の中でも、選択に迷う場面はよく出てきますが、山での遭難と相通じるものがあるのではないかと感じるものがありました。なかなか深みのある本でした。