トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか

トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか (ヤマケイ文庫)

トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか (ヤマケイ文庫)

興味を感じつつ読み進め、読み終えました。断片的な報道でしか知らなかったこの事故について、具体的に知ることができ、かつ、発生原因についての分析も読むことができて、かなり参考になりました。
この事故が起きるにあたっては、ツアー登山(既にいろいろと問題が指摘されていますが)でスキルや体力が区々な人々が集まり、そこに、登る山について知識や経験が十分とはいえないガイドがあてがわれてしまっていた(しかも参加した複数のガイドも人的関係が希薄でコミュニケーションが十分ではない)といった問題や、ガイドを含め参加者に低体温症に対する認識が十分ではないまま(人にもよりますが総じて防寒対策が十分な状態にはなかったことが本書では明らかにされています)、悪天候の中で判断を誤り山小屋を出てしまい、暴風雨の中、山中をさまよう、という大きなミスを犯してしまったことなど、様々な要因が積み重なっていたということがわかりました。法的に、どこで、誰の過失を認定するか、というのは、なかなか難しい問題という印象も持ちましたが、特に重要なことは、やはり、この事故から多くの教訓を導き出して再発防止へと生かす、ということではないかと思います。
中高年層(若年層より体力が劣り寒さにも弱く低体温症に陥りやすいことも本書では指摘されています)による登山が活発に行われ、事故も繰り返されている現状の下、本書が広く読まれ、事故防止に役立つことを強く願いたいものです。