細川ガラシャ (中公新書)

細川ガラシャ (中公新書)

細川ガラシャ (中公新書)

私の中の、細川ガラシャのイメージは、高校生くらいの時に読んだ司馬遼太郎の「関ヶ原」の中で、関ヶ原の戦いの前の西軍からの人質要請を拒否した細川ガラシャが壮絶な死を遂げる、その場面に集約されている気がします。この場面は、繰り返し、いろいろなドラマなどで登場しますが、やはり、細川ガラシャの強烈なイメージを人々に与えているものと言えるでしょう。
では、それ以外の細川ガラシャの人生とは?と問われても、私自身、明智光秀の娘として細川忠興に嫁ぎ本能寺の変の後には幽閉生活を送り、その後、キリシタンになり、程度しか知らず、そういう思いもあって、本書を知って興味を感じ読んでみました。
著者は、イエズス会の資料に残る細川ガラシャの足跡を丹念に追っていて、従来、あまり語られてこなかった細川ガラシャの人間像、例えば、夫の忠興との離縁を真剣に考えイエズス会関係者に相談を持ちかけていたり、キリスト教に対する迫害が徐々に進む中で「殉教」を真剣に考えていた姿などが紹介されていて、細川ガラシャという人物を、より等身大の、身近なものとして感じることができたように思いました。
父・光秀の謀反がなければ、もっと幸せで平凡な人生を歩みつつもここまで名は残さなかったかもしれません。人生というものは、何が起きるか、どういう変転をたどるか、わからないものだと思います。細川ガラシャの辞世の句「ちりぬべき 時知りてこそ 世の中の 花も花なれ 人も人なれ」を、本書の中でも何度か読み返しながら、自分にもそういう時がいずれ来るのだろう、その時にこういう澄み切った気持ちになれるだろうか、などと、読了した後、しばし、細川ガラシャの生涯や我が身に思いをはせていました。