取り調べ可視化、性犯罪は除外を…被害者支援側

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140503-00050139-yom-soci

警察庁幹部は「性犯罪の取り調べでは、容疑者が被害者をおとしめる虚偽の供述が珍しくない」と指摘する。取り調べの初期段階で「女性が誘ってきた」と事実に反する内容を供述し、自身を正当化する容疑者もいるという。このため現行の取り調べで取調官が供述を調書にまとめるのは、犯行を認めた部分が中心だ。容疑者が被害女性を傷つける発言をしても、後になって虚偽だと認めれば、取調官は容疑者の意向も踏まえ、調書には記載しない。
当初は容疑を否認しても、取調官から犯行現場に残された証拠を突きつけられ、犯行を認める容疑者もいる。こうした場合、法廷で虚偽の発言を蒸し返すことは、ほとんどないという。
しかし、性犯罪事件の取り調べが全過程で可視化されれば、取り調べ当初の心ない供述も記録に残る。さらに、裁判で、虚偽の内容を含んだ映像や音声が再生される可能性もある。

「性犯罪の被疑者」=「有罪」=「有罪に沿わない供述は虚偽」という前提に立っているかのような記事ですが、事件というものは、そういう単純なものではなく、被害者(と称する側)の供述が虚偽、ということもあります。
また、上記のような、否認供述は調書化しない、という手法が、供述の変遷状況をわかりにくくし信用性判断を難しくしてきたという負の側面もあって、取り調べの可視化が、そういった負の側面を解消する存在という理解も、この記事では欠落していると思います。
被害者側への配慮が必要、という点では、性犯罪に限らず、例えば恐喝事件でも、被害者側の知られたくない弱み(それが知られれば家庭が崩壊し仕事も失いかねない、といった)が可視化により明るみに出かねない、といったこともあり得ますから、この問題は、性犯罪に限ったことではないでしょう。そういう、あるべき必要な視野もこの記事には欠けています。
被害者が不利益を被るから可視化は駄目だ、と言い始めたら、可視化は不可能になってしまいますから、むしろ、この問題は、証拠開示や公判段階で、証拠を取り扱うにあたり、訴訟関係者だけしか知り得ないようにする(公開原則に反しないように厳格な要件を設けて)とか、そういった方向で検討すべき問題ではないかと思います。それは、組織犯罪のような、被疑者、被告人自身に不利益が及びかねない場合にも検討すべき余地があるでしょう。