- 作者: 堀川惠子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/01/31
- メディア: 単行本
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戦後、長く東京拘置所で教誨師を務め、最近、亡くなった僧侶からの聞き取りを元に、知られざる死刑囚の執行を待つ生活や、それに対する教誨の実態を赤裸々に紹介したもので、従来、こういった話は、断片的に、あるいは抽象的な形でしか語られなかった中、ここまで具体的に紹介されていることに、読みながら驚くとともに、大変参考になる内容でした。
僧侶が、元々、広島の出身で、原爆で九死に一生を得た体験も持ち、描かれている生家の寺の風景は、広島出身の私にも親近感を感じるものがあり、また、原爆の体験が教誨活動を行うにあたり大きく影響していたことも、共感するものがありました。
「死」を前にした死刑囚の様々な姿、それにできるだけ寄り添おうとする教誨師(死刑制度と一体と化しているといった批判も受けつつ)の姿には、死刑制度、人の生死というものを考えさせるものがあり、私も、人生の折り返し点を過ぎて、死へと確実に向かいつつありますから、重いものを感じつつ読み進めました。
死刑制度に賛成するにしても反対するにしても、死刑の実態や死刑囚がどのようにして刑に服するのかといったことは、よく知っておく必要があると思います。その意味で、本書は、貴重な情報を提供しているもので、興味ある方には是非一読をお勧めします。
いろいろと本を読んでいると、役だったもの、今ひとつだったもの、いろいろなものに巡り会いますが、この本は、読んでおいて良かったとしみじみ思えるものでした。