永山則夫 封印された鑑定記録

永山則夫 封印された鑑定記録

永山則夫 封印された鑑定記録

買って、ぽつりぽつりと読んでいたのですが、やっと読み終えました。想い読後感と、感動に似た気分が、ないまぜになっているような感じですね。
永山元死刑囚の、生い立ちや犯行に至る経緯などが、鑑定記録では克明にトレースされていて、よくぞここまで鑑定をやり切ったものだという(私もこれまでいろいろな鑑定書を読み鑑定人にも接触してきたのでその経験にも照らし)思いを強く持ちましたし、永山元死刑囚が、不幸な生い立ちの中、大きな負荷がかかりそれによる影響に苦しみつつ、向学心を持ち家族との触れ合いも求めていた、それが常に裏目裏目に出ながら犯行へと至るまでに、誰かがうまく手を差し伸べていれば、少なくとも死刑に処せられるような最悪の事態にまでは陥らなかったのではないか、という印象を強く持ちました。「社会政策は最良の刑事政策である。」と、かつて高名な外国の学者は言いましたが、正にその通りである、ということを、この本を読んで痛感しました。
人は競争の中で切磋琢磨し、それにより社会に活力が生まれ維持されて、より高いステージへと伸びて行く、というのは、1つの真理ですが、それだけでは、落後し落ちて行くだけ、という人が多数生まれてしまいます。また、世の中には、児童虐待など、弱者には抵抗しがたい不条理なことが無数にあって、自己責任では済まないことも数多くあります。永山元死刑囚について、死刑制度の可否や死刑基準、というところに光が当たりがちですが、こういう不幸な人生を生まないための適切な社会政策の必要性、それがひいては適切な刑事政策にもなって、犯罪防止、抑止にもつながるということを、強く感じました。