猪瀬前都知事、略式起訴へ 収支報告書虚偽記載の罪で

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140325-00000018-asahi-soci

公選法は、選挙資金ならば借入金でも選挙運動費用の収支報告書に記載することを義務付けているが、猪瀬氏の収支報告書には無記載だった。特捜部は21日、東京都港区にある猪瀬氏の個人事務所などを家宅捜索したが、資金が選挙活動に使われた証拠は見つからず、「選挙の公平さが害されたとまではいえない」と判断。略式起訴にとどめる方針を決めたとみられる。

検察官が捜査を進める上では、収集した証拠を徐々に評価しながら、どういう処分にするかを常に検討するものですが、捜査を尽くしてきた段階で、不起訴にする事案ではないな、起訴すれば有罪になる見込みはそれなりにあるな、と感じつつ、それが十分かというと、そこまでは言えないという、微妙な場面に遭遇することがあります。嫌疑不十分か起訴猶予かぎりぎりのところで、これはやはり起訴してきちんと刑事責任を問うておきたい、とも考えた場合、事案の内容にもよりますが、略式手続による罰金でどうかを選択肢として考えることは少なくありません。被疑者や弁護人が事実関係を否定し争っていれば略式手続にはできませんが(そういう対応故に思い切って公判請求する、という、一種皮肉な結果になることもあります)、検察官からそれとなく打診し、乗ってくることで、略式処理、ということになることも少なくありません。落としどころが見出せた検察庁、罰金で済み、より重い処分にはならずに済んだ被疑者、双方にとって、一種のウインウインの関係になることもあります。
そういう目で、上記の猪瀬氏のケースを見ると、いろいろと想像が巡らされるものがあります。あくまで推測ですが、選挙資金であることを強く否定していた猪瀬氏としても、起訴されれば有罪になるリスクを負うこと(その場合には罰金では済まないリスクも負う)、不起訴になっても検察審査会の議決により強制起訴されるリスクが生じ、かつ、今後、当分の間、最終的な刑事処分が決まらない不安定な立場に置かれることになることを嫌い、政治家としての先もないことも踏まえ、罰金刑なら受け入れるという決断をした可能性はありそうです。そして、それは、不起訴にすることで強く非難されたり検察審査会の審査やその議決(起訴相当、不起訴不当)による再捜査を迫られることになりかねない可能性を封じておくという、検察庁にとってのメリットにもつながる面があると思います。
ただ、もし、そうなった場合、それが刑事責任の追及の在り方として適正妥当なものであったかは、刑事責任が問われ検察審査会の審査対象にならないだけに、問題としては残ることになり、そこは制度自体の不備、不十分さによる、ということにもなります。