性別変更の夫婦の子で初判断

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131211/k10013753581000.html

最高裁判所第3小法廷の大谷剛彦裁判長は、「現在は性別を変えることができるようになったうえ、性別変更後に結婚することも認められている。結婚できる以上、血縁関係がなくても子どもの父親と認めるべきだ」という初めての判断を示し、「嫡出子」と認める決定を出しました。

性同一性障害」の夫婦の子どもについては、法務省の見解に従ってこれまで「嫡出子」と認められてきませんでしたが、決定によって国は今後、対応の見直しを求められることになります。
また、生殖補助医療の技術が進み家族の形が多様化するなかで、人工授精などについて、法律の整備を求める意見は国の審議会でも上がっており、最高裁の決定は今後の国の議論にも影響を与えそうです。

民法772条1項は、「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。」としていて、従来、その基盤としては、婚姻中の夫婦が性行為を行うが故にそのような推定が合理的かつ妥当であるという考え方があったと言えるでしょう。そうであるからこそ、そのような関係になかった場合には推定は崩れるということも言われてきたわけです。
しかし、そういった生物学的な点だけでは律しえない、新たな婚姻関係が出現している以上、従来の、生物学的な点のみで考えていては、正当な婚姻に基づく出生を、かえって不利益に取り扱う(嫡出性を否定することで)になってしまいます。そこは、立法で解決するのが望ましいと私も思いますが、そうなっていない現状下で、解釈の問題として、最高裁が、ぎりぎり許容されるところで踏み込んで判断してきた、ということを感じます。
このように、伝統的な家族の在り方、価値観とは別の、異なる、様々な家族の在り方、価値観が出てきていて、従来の在り方、価値観を、ただ強硬に主張してその枠内にいるように、と言っていても無理な時代になってきています。もちろん、伝統的な家族の在り方、価値観は今後も尊重されるべきですが、それだけでなく、様々な新たなニーズに、法制度もうまく、柔軟に対応しないと、国民の間に方々で不満が生まれ、社会制度は安定するどころかかえって不安定になり、幸福追求を阻害することになるでしょう。日本で議論が繰り返されながら日の目を見ていない夫婦別姓や、諸外国で既に大きく問題になっている(法制度化されている国もある)同性婚など、今後、日本でも法制度化が迫られることになる点はいくつもあり、個人の尊厳や幸福追求を最大限保障する日本国憲法下において、早急な検討、実現が必要になると言うべきでしょう。自民党など、既に公表されている改憲案で、そういった点への配慮が極めて乏しいことには大きく憂慮されるものがあります。