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先ほど、最終回の放映を観ました。
私が、原作を初めて読んだのは、司法試験に合格した直後で、大学4年生の11月から12月ころであったと思います。昭和61年で、日航ジャンボ機が墜落した翌年、日本がバブル期へ向け、高揚していた頃でした。当時の早稲田大学法学部校舎(今は建て替わり新しくなっていますが)の4階にあった学生読書室で、文庫本を全巻並べ、受験勉強からの解放感に浸りながら、時々、1階の学生ラウンジに降りてコーヒーを飲みながら、一気に読んだ記憶があります。その後、社会に出てから、1、2回ほど、通してまでではなかったと思いますが、割とじっくりと読んだことがあったと思います。
このように、原作はじっくりと読んだほうなので、ドラマがどのような内容になるのか、興味津々でしたが、原作の味わいをうまく生かしつつ、オリジナルの場面を随所に入れ、うまく映像化していて、場面によっては原作を超えたと思わせるところもあって、かなり楽しむことができました。今月になって放映された最終クールでは、原作ではかなり厳しく批判的に描かれていた乃木希典について、その人間性や苦悩にうまく光を当てて描いていたり、旅順要塞攻撃で犠牲になった多くの将兵の心情もきちんとドラマの中で出していて、行き届いた作りに感心しました。
生前の司馬遼太郎は、映像化することで、好戦的な受け取られ方をするのを憂慮し、許可を与えなかったとも言われていますが、国家が、人が戦うことの残酷さや苦悩、それでも戦わざるを得ない場に立たされた人の姿を、抑制を効かせつつうまく描いていて、私のようなしがない弁護士がこういうことを言うのも何ですが、原作者の司馬遼太郎にも、是非、観てもらいたかったと思いました。
最終回で、日露戦争で勝利はおさめたものの、秋山兄弟にしても、児玉源太郎、乃木希典にしても、手放しでは喜ばず、「今後」がどうなるかを注視しつつ、ドラマは終わります。その後の日本がどうなって行ったのか、なぜそうなったのか、ということを、このドラマを契機として、改めて考え、そこから導かれる教訓を、今へと生かす必要を感じます。