特捜検事逮捕:「改ざん意味ない」 前田容疑者、故意否定

http://mainichi.jp/select/today/news/20100923k0000m040127000c.html

最高検は意図的な改ざんとみて調べているが、前田検事は「(裁判で証拠とされた)捜査報告書に正しいデータが残されている以上、FDを改ざんする意味がない」と主張しているという。

別のエントリーでもコメントしましたが、フロッピーの改ざんが行われた時点では、上記の「正しい」捜査報告書は、まだ被告人、弁護人に開示されていないはずで(起訴直後なので)、捜査報告書も改ざんするか、捨ててしまうことで、一種の「完全犯罪」が成立する可能性があったはずです。
警察から検察庁へ事件が送られる際には、送致書、送付書や、関係書類追送書に、書類目録が付けられますが、検察庁で作成した書類は、記録につづっていくだけで、特に目録のようなものは作成されないものです。事件の主任検事は、記録の原本も管理していますから、その気になれば、まずい書類を改ざんする、差し替える、捨ててしまう、といったことは容易にできます(普通はしませんが)。
フロッピーの改ざんと合わせて捜査報告書に何らかの作為を加えることを実際にやったか、やろうとしたが何らかの事情でできなかった、という可能性、そういった工作が、今年の1月から2月にかけて大阪地検内で問題化し、トラブルに発展した可能性、さらには、トラブル収拾の過程で捜査報告書に関する工作についての事後処理が行われた可能性といったことが、今後、解明されるべきではないかという印象を受けます。

追記:

上記のようにコメントしたところ、

「FDに時限爆弾仕掛けた」 改ざん容疑の検事、同僚に
http://www.asahi.com/national/update/0922/OSK201009220173.html
http://www.asahi.com/national/update/0922/OSK201009220173_01.html

という記事に接し、そこでは、

検察関係者によると、今年1月に大阪地裁で開かれた村木氏の初公判で、FDに記録された最終更新日時内容が問題になった。このため、同僚検事の一人が東京地検特捜部に応援に行っていた前田検事に電話をかけ、「FDは重要な証拠なのに、なぜ返却したのか」と聞いた。これに対し、前田検事は「FDに時限爆弾を仕掛けた。プロパティ(最終更新日時)を変えた」と明かしたという。
さらに同僚検事が、最終更新日時が「6月1日」と書かれた捜査報告書が特捜部の手元を離れ、厚労省元局長の村木厚子氏(54)=無罪確定=の裁判を担当する公判部に引き継がれたことを伝えると、驚いた声で「それは知らなかった」と語ったという。
こうしたことから、前田検事はデータを書き換えることで上村被告側を混乱させるほか、捜査報告書が公判に出なければ捜査段階の供述調書の補強になると考えた可能性がある。これらの仕掛けを「時限爆弾」と表現した疑いがある。

とされています。
上記の「同僚検事」としては、重要な証拠品であるフロッピー(このような検察立証上、重要な証拠品を早々と返却するということは、通常の検察実務ではあり得ないことです)が既に返却済みであることに疑念を持ち、それとともに、存在しないフロッピーでは更新日時を確認しようがないので捜査報告書に基づいて問い質した、という流れであったものと思われます。
本ブログの、前のエントリー

検事、押収資料改ざんか 捜査見立て通りに 郵便不正
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20100921#1285031915

では、可能性として、

主任検事としては、フロッピーディスク上の更新日時が、検察ストーリーと合わないことに気付き、改ざんして返却したものの、実際の正しい更新日時を記載した捜査報告書(改ざんの時点では、起訴直後で、まだ被告人、弁護人に開示されていなかったはず)の改ざん、廃棄には、何らかの理由で失敗したか、その存在を失念したまま、公判前整理手続の過程で被告人、弁護人に開示されてしまったことが考えられます。

と推測してみましたが、どうも、その推測が当たりつつある印象を受けます。やはり、中途半端な証拠隠滅工作であった可能性が、徐々に高まってきているようです。