<証拠改ざん事件>元特捜部長、犯人隠避を否認 初公判で

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110912-00000016-mai-soci

検察側は冒頭陳述で、佐賀被告が昨年1月30日、部下の前田恒彦元主任検事(44)=証拠隠滅罪で実刑確定=が郵便不正事件の証拠品だったフロッピーディスク(FD)のデータを改ざんしたことを国井弘樹検事ら3人から知らされた、と述べた。
佐賀被告は国井検事ら2人の前で、前田元検事と電話で話し「データを変えたのは本当か」と質問。前田元検事から「本当です。6月1日から8日に変えました」と告白され、「何で前田はこんなことしちまったんだ」と涙を流したとした。更に、その場にいた検事に前田元検事が改ざんを認めたと伝えた、と指摘した。

佐賀被告の弁護側は冒頭陳述で、1月30日に佐賀被告は前田元検事と電話しておらず、2月1日に初めて電話で話した際も故意の改ざんとの告白を受けていないと主張。証拠採用された佐賀被告の執務記録には、1月30日の部分に「6月8日」と書かれているが、この日に前田元検事と電話した記載はなく、通信記録も存在しないなどと反論した。

この点は、検察官立証の大きなポイントになっていると思われますが、前田元検事及び「国井検事ら2人」からは、上記のような検察ストーリーに沿う供述が得られ、公判でもそういった証言が出る可能性が高いと推測され、執務記録に上記のような記載もあるという状況下で、30日に電話自体がなかった、という主張が通るかというと、常識的に考えてかなり難しそうな印象は受けますね。本件の捜査が行われるようになった昨年9月の時点では、昨年1月時点での通話記録は、約7か月間経って、保存期間経過によりとれなかったものと思われますが、執務記録に通話の記載がない、というのは、根拠として強いものとは言えない、という印象も受けます。
検察、被告人の冒頭陳述を、双方、読み比べてみて、主張としてどうかについて、おって感想を述べてみたいと考えています。

追記:

大阪地検隠蔽:大坪・佐賀両被告に対する冒頭陳述の要旨
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110913k0000m040069000c.html

一通り読んでみましたが、検察ストーリーのほうが、当然のことですが、前田元検事と、国井、塚部らの供述によって、がっちりと固められていることがうかがわれる一方、大坪、佐賀側のストーリーは、

佐賀側が

国井は早くから改ざんを知り、過誤ストーリーが虚偽と知っていた。国井は最高検の捜査開始後、犯人隠避ストーリーを供述し、本件は立件された。

大坪側が

国井は改ざんの秘密を前田と共有し、事実が明るみに出れば懲戒処分の対象となり、犯人隠避や証拠隠滅の共犯に問われかねない状況だった。過誤ストーリーは責任を免れようとする前田、国井によって考えられた。

と主張しているように、前田や国井が嘘をつき犯人隠避というストーリーが作り上げられ、でっち上げられて、起訴されてしまった、と言いたいようです。
ただ、前田側に、そうした嘘をわざわざついてまで、上司による犯人隠避(証拠改ざんではなく)という虚偽ストーリーをでっち上げるメリットは考えられない上、国井が、そうした虚偽ストーリーにつきあう理由も必要も考えにくく、しかも、そういった虚偽ストーリーがでっち上げられたという対抗ストーリーをぶつけても、国井から改ざんを打ち明けられたという塚部や白井の位置づけがますます説明できなくなる可能性が高く、大坪、佐賀側のストーリーには、かなり無理なものが感じられます。
疑問を感じるのは、検察ストーリーを前提とすると、関係者中、特に、国井には、犯人隠避罪が成立する可能性が高く(特に、次席検事への虚偽報告の場に同席した点は、犯人隠避罪成立の上で決定的でしょう)、こうした人物が、大坪、佐賀の公判対策のためか、立件もされず、いまだに検事の職にあるということ自体に、この事件の醜い側面が露わになっているということを強く感じます。