http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100424k0000m040094000c.html
警視庁によると、交番勤務の地域課員が1月14日午後8時45分、タクシーに無賃乗車した20代の男を詐欺容疑で現行犯逮捕、同9時45分に身柄を同署に引き渡した。しかし課長と課長代理は翌15日、逮捕から引き渡しまでに1時間を要したことに気付き、7分後に引き渡したとする捜査書類に書き換えさせた。
刑事訴訟法は、現行犯逮捕した容疑者を直ちに引き渡すよう規定しており、課長は「手続きが不適切と思われたくなかった」と話しているという。
刑事訴訟法上、現行犯人逮捕について、
第216条
現行犯人が逮捕された場合には、第199条の規定により被疑者が逮捕された場合に関する規定を準用する。
とされ、通常逮捕に関する
第202条
検察事務官又は司法巡査が逮捕状により被疑者を逮捕したときは、直ちに、検察事務官はこれを検察官に、司法巡査はこれを司法警察員に引致しなければならない。
が準用されます。おそらく、上記の記事にある「交番勤務の地域課員」が司法巡査で、直ちに司法警察員に引致する(品川警察署へ、ということになると思われますが)べきところ、約1時間を要したため、書類をメークしてしまったということでしょう。
昔、新任検事の頃、何の事件であったかは覚えていませんが、逮捕手続について、地域課の警察官を呼んで事情を聞いていたところ、その警察官が、検事さん、我々は現場の状況に応じて対応していて、それが現行犯逮捕かどうかとか、どのようにして現行犯逮捕したか、といったことは、刑事課の捜査担当者が後から適当にまとめてくれるものなんですよ、と率直に語っていて、なるほど、現行犯人逮捕手続書というものは、そうやって適当に作成されるものなんだなと、目から鱗が落ちるような思いがしたことがありました。警察官が作成する手続書、報告書等の全部が全部嘘だらけ、というわけではないにしても、かなり脚色したり嘘をまじえていることはよくあるので、裁判官、検察官、弁護士としては、真に受けず疑いの目で見る習慣は持っておくべきでしょう。
それにしても、上記の地域課の警察官は、おそらく相手が新任検事で物がわかっていないとあきれて率直に教えてくれたものと思いますが、振り返ると、まだ無知だった私に貴重なことを教えてくれたものだと思います。