秋葉原連続殺傷 弁護側手法に疑問の声

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100214-00000061-san-soci

弁護側が被害者など多くの供述調書の証拠採用を不同意としたため、計42人もの証人が出廷せざるを得ない事態になった。“心の傷”を抱える事件関係者にとっては大きな負担になる。また、弁護側は争点に挙げられている責任能力について、冒頭陳述で一切触れなかった。弁護側は「戦術」と説明するが、その意図ははっきりしない。

刑事訴訟法上、書証に同意する義務はありませんから、被告人、弁護人側が、書証は不同意にした上で、証人で立証してほしいと望むことは、何ら間違ったことではありません。ただ、被害者やその遺族、目撃者を証人とすることについては、肉声で語ることで、被害の悲惨さや強烈な被害感情が生々しく法廷に顕出されることになって、供述調書で立証されるよりも被告人に不利にはたらく恐れがあるでしょう。また、あえて証人尋問まで行う必要性が、尋問を行っても認められなかったということになると、裁判所(裁判員裁判における裁判員を含む)の被告人に対する心証がより厳しいものになり、事実認定や量刑上、不利にはたらくということもあり得ます。秋葉原事件でも、こういった点は問題として指摘できるでしょう。
責任能力については、被告人質問で明確化するものとして冒頭陳述では争う理由を明らかにしなかったのかもしれませんが、従来型の手法で、裁判員が関与する裁判であればかなり問題はあるでしょう。ただ、本件は裁判員裁判ではなく、裁判所としても、いずれ被告人質問で責任能力に関する質問はされ、問題なければそれまで、問題があるようであればその時点で検討すれば足りる(弁護人から新たな証拠調べ請求があっても公判前整理手続までに請求できなかったやむを得ない理由がなければ却下すれば足りる)と、鷹揚に構えている可能性が高いと思います。
証人で呼ばれる多数の被害者、目撃者等の方々には、大きな負担をかけてしまうことになりますが、刑事裁判におけるやむを得ない、避けがたい面であり、我慢して協力していただくしかありません。