犯罪捜査規範

最近、警察や検察庁に関する、嫌な話を聞くことが多く、ややうんざりしている面がありますが、ふと思いつき、犯罪捜査規範の冒頭部分「捜査の心構え」を読み直してみました。
犯罪捜査規範は、

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8A%AF%E7%BD%AA%E6%8D%9C%E6%9F%BB%E8%A6%8F%E7%AF%84

にある通り、国家公安委員会規則であり、警察官が捜査を行うに当たっては守るべき「鉄則」と言っても過言ではありませんが、警察官だけでなく、検察官にとっても有益な内容です。
特に目を引くのは、まず、

(捜査の基本)
第2条
1  捜査は、事案の真相を明らかにして事件を解決するとの強固な信念をもつて迅速適確に行わなければならない。
2  捜査を行うに当つては、個人の基本的人権を尊重し、かつ、公正誠実に捜査の権限を行使しなければならない。

です。「公正誠実な捜査権限の行使」が求められていて、思い込みに基づく、不誠実な、偏頗な捜査権限行使は許されません。しかし、そういった権限行使がいかに多いか、それがいかに深刻かつ取り返しがつかない事態を招いているかは、改めて指摘するまでもないでしょう。
また、

(法令等の厳守)
第3条
捜査を行うに当たつては、警察法 (昭和二十九年法律第百六十二号)、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号。以下「刑訴法」という。)その他の法令および規則を厳守し、個人の自由及び権利を不当に侵害することのないように注意しなければならない。
(合理捜査)
第4条
1 捜査を行うに当つては、証拠によつて事案を明らかにしなければならない。
2 捜査を行うに当つては、先入主にとらわれ、勘による推測のみにたよる等のことなく、基礎的捜査を徹底し、あらゆる証拠の発見収集に努めるとともに、鑑識施設および資料を充分に活用して、捜査を合理的に進めるようにしなければならない。
(総合捜査)
第5条
捜査を行うに当つては、すべての情報資料を総合して判断するとともに、広く知識技能を活用し、かつ、常に組織の力により、捜査を総合的に進めるようにしなければならない。
(着実な捜査)
第6条
捜査は、いたずらに功をあせることなく、犯罪の規模、方法その他諸般の状況を冷静周密に判断し、着実に行わなければならない。

とあることも、読み直してみると、なかなか含蓄があります。
捜査は、「個人の自由及び権利を不当に侵害することのないように注意し」「先入主にとらわれ、勘による推測のみにたよる等のことなく」「すべての情報資料を総合して判断」しつつ、「いたずらに功をあせることなく」「着実に」行わなければならないものとされています。これらが遵守されていれば、鹿児島の選挙違反事件のようなでたらめな捜査も、富山の強姦事件における人違い冤罪事件も、起きることはなかったでしょう。
なお、

(関係者に対する配慮)
第10条
捜査を行うに当つては、常に言動を慎み、関係者の利便を考慮し、必要な限度をこえて迷惑を及ぼさないように注意しなければならない。

という規定もあり、例えば、

弁護士が警察署長に送る書面をあらかじめ「読まないで捨てる」と公言する警察官。
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20070814/1187078526

は、「常に言動を慎み、関係者の利便を考慮し、必要な限度をこえて迷惑を及ぼさないように注意」しているとは到底言えないように思います。
このように、改めて、ごく一部を読み直すだけでも、犯罪捜査規範には非常に参考になる、守るべきことが書かれていて、特に警察官が捜査の基本に立ち戻る上で、重要なものではないかという気がします。