海外のオンラインカジノに参加するのは違法か合法か? (続)

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20070508#1178552296

でのコメントについて、

http://danblog.cocolog-nifty.com/index/2007/05/post_1bbf.html

で言及がありました。
壇弁護士は、

この場合業者側は日本で犯罪をする必要があるが、日本で具体的に何をしたのだろうと考えて、私は、悩み出してしまった。
単純にオンラインカジノを開設するだけの場合、サーバにアップロードしてしまえば後は何をするわけでもない。この場合でも犯罪を日本でしているといえるのだろうか?

と述べられていますが、もっともな疑問であり、ここをどう考えるかが、この問題の核心的なところでしょう。この点について、いろいろな考え方がありますが、私は次のように考えています。
刑法の目的は法益(法により保護されるべき利益)の保護にあり、犯罪地についても、そのような刑法の目的に沿って考えられるべきでしょう。この種の賭博の場合、確かに、海外の業者の「物理的な」行為自体は、海外において完結していますが、刑法上の違法評価の対象となる行為は、そういった「物理的な」行為に限定されるべきではなく、規範的な評価の対象としての「実行行為」として考えられるべきです。日本国内で、インターネットを利用して賭客が賭博行為を行っている、ということは、業者側の実行行為が、そのような形態で日本国内にまで及んでいると見るべきであり(この辺が「規範的評価」ということになります)、だからこそ、日本国内で、賭客がバーチャルとはいえカジノで遊び賭博に興じることができる、と言えると思います。
あまり良い例ではありませんが、海外から日本へ向けてミサイルを発射した場合、ミサイル発射行為自体は海外で完結していますが、日本国内に着弾した場合、日本国内も犯罪地になるべきでしょう。海外からオンラインカジノとしての情報を世界に向けて発信し、日本国内でそれを受けて賭博に興じた、という場合にも、同様に考えるべきです。実行行為、という捉え方ではなく、結果、と捉えることも可能でしょう。
刑法上の実行行為というものを考える上で、規範的評価を避けて通れない面があり、刑事法以外において想定される「行為」とは必ずしも完全には合致しない、ということではないかと思います。