「取調べの録音・録画記録制度と我が国の刑事司法」(本江威憙)

判例時報1922号11ページ以下に掲載されていたので、読んでみました。
若干の感想ですが、従来の検察体制の中で功成り名遂げた人の、典型的な意見だな、というのが第一印象でした。そういう人々は、どうしても、従来の制度なり実績なりを、肯定的に見がちですし、新たな制度等が導入されれば、そういった「良いもの」が崩れてしまう、という危機感を持ちがちでしょう。特に目新しい議論はないと思いました。
ただ、よくよく読むと、「可視化」に強く反対する論調を展開しつつも、諸外国の制度を紹介した上で、「取調べの録音・録画を義務付ける制度の導入は、我が国の刑事司法にとって極めて重要な役割を果たしている取調べの機能を阻害し、これを放棄するに等しいものであるからこそ、このように、刑事司法全体にわたる議論や検討を並行して行う必要があるのである。」(19ページ)と、さりげなく書かれてあり、可視化に抵抗しきれなくなっている現状への認識が、こういったところに現れているのではないか、という印象を持ちました。
私自身は、既にこのブログでも述べているように、真実発見と人権保障の双方を追求できる制度こそ望ましいと考えており、刑事免責や司法取引などについても、真剣に検討する必要があると考えていて、その点では、「刑事司法全体にわたる議論や検討を並行して行う必要がある」という認識です。