NHK・大河ドラマ「功名が辻」のシーン

一昨日の夜、「功名が辻」を観ていたところ、討ち死にした浅井長政ほかの首級が、いわゆる「箔濃(はくだみ)」にされて新年の宴で披露され、織田信長に命じられた武将が、首級の一部で作られた杯で酒を飲み、その場にいたお市の方に叱責される、というシーンが放映されていました。同様のシーンは、以前にも、別の大河ドラマで目にしたこともあり、結構、有名なシーンではあります。
ただ、このシーンの根拠となっている信長公記の記述を読むと、杯にして酒を飲んだとは書かれておらず、まして、その場にお市の方がいたとも一切書かれていません。創作された部分がかなりある、ということになります。
ドラマだから、と言えばそれまでですが、上記の「功名が辻」では、武将の中で、明智光秀だけが首級の杯で酒を飲むのをためらい、信長の逆鱗に触れる、という描かれ方がされていて、これが、おそらく、本能寺の変へ向けての伏線になるのだろうと強く感じさせられるものになっていました。
私自身は、かなり前から、大河ドラマを、一つの娯楽番組として観ていて、かなり脚色があるな、と思ってもそれほど気にしていないのですが、信長、光秀、秀吉(杯で酒を飲んで、お市の方に叱りとばされていました)、といった歴史上の著名人が、上記のような相当の脚色あるシーンに登場し、視聴者にあまりにも強烈な印象を与えると、それが、あたかも史実そのものであるかのような印象を与え、極めて多数の国民の歴史認識に多大な刷り込みを与えてしまうのではないか、ということが気になりました。
この流れで行くと、明智光秀は、織田信長の非道を阻止するために敢えて謀反に及んだ、という描かれ方になりそうですが、この功名が辻時代考証を担当されている小和田哲男教授の著書

明智光秀―つくられた「謀反人」 (PHP新書)

明智光秀―つくられた「謀反人」 (PHP新書)

でも明らかなように、本能寺の変の原因については、「信長非道阻止説」のほかにも様々な説が乱立していて、定説を見ない状態です。
大河ドラマの、危険な側面(と言っても深刻なものではありませんが)を観たような気がしました。