「2項詐欺罪における被欺罔者の処分行為」

http://blog.livedoor.jp/you136/archives/50452622.html

刑法に関心がある人以外には、何が何だかわからない話になりますが、コメントで書き込もうとしたところ、字数制限があって書き込めなかったので、ここで若干のコメントを。
司法試験の場合だけでなく、刑事実務上も、まず客観的なものから検討し、次いで、主観的なもの(故意など)に及ぶ、という手法が基本だと思います。事件処理にあたり、ごちゃごちゃしていて、わかりにくいものもありますが、私自身、そのような場合、ごちゃごちゃしたままではなく、問題点を抽出、分析し、上記のような手法を基本として検討してきました。
したがって、この問題では、「欺く行為」があるかどうかを、まず検討するのが筋、と言えるでしょう。
一般的に、合格者とか予備校が、「この点が評価された」と言っている点が、本当にその通り評価されたかどうかはわからないと思います。まったくの的外れとは言えないまでも、勘違いとか思いこみにより受験生をミスリードしている場合も皆無ではないでしょう。いちいち疑っていては勉強になりませんが、合格者や予備校が言っていることであっても、鵜呑みにはしないという主体的な学習態度も必要ではないかと感じます。
「甲は、無賃乗車をしようと決意し、乙が運転するタクシーを停車させ、乗車後、乙に対し、A地点までの運転を依頼したので、乙はタクシーを発車させた。」という問題で、タクシー発車時に2項詐欺罪の成立を認めるのは早すぎないか、ですが、無賃乗車で立件されるようなケースでは、「支払意思・能力」のうち、能力も決定的に欠けている場合がほとんどで、「決意後、思い直して料金を支払う」といった事例が、立件の対象になることは、まずないと言っても過言ではないと思います。また、結局において料金を支払えば、実務上、立件されることはないでしょう。
人は、構成要件を念頭に置いて犯罪を犯すわけではなく、発生した犯罪的事象を構成要件的に評価する作業を経て、構成要件該当性が決まりますから、評価の過程で、日常的な感覚とやや合わない場合が生じることは避けがたい面があります。ただ、そういった「ズレ」があまりにも大きくなりすぎれば、評価の妥当性が問われますから、悩ましい面もあると思います。