放火事件における燃焼実験(前)

放火事件(未遂を含む)の捜査を行う上で、燃焼実験は避けて通ることができないでしょう。
放火事件の特徴は、証拠が燃えてしまい残らないことが非常に多いということです。目撃者がいれば強力な証拠になりますが、密かに行われることが非常に多いのも、この種事件の特徴です。
したがって、被疑者・被告人の「自白」に、立証を大きく依存する場合が多いということになります。
放火事件で、熾烈に争われたり、無罪になったりするものが少なくないのは、こういった放火事件特有の証拠構造によるところが大きいと言えます。捜査機関としても、この種事件では、自白の任意性・信用性確保に細心の注意を払うことが不可欠です。そこで必要となるのが、燃焼実験です。
被疑者・被告人が、放火の手段・方法について具体的に自白していても、実際にその手段・方法で放火行為が行えるかどうかはわかりません。そこで、燃焼実験により再現してみて、供述通りに放火が実行できるかどうかを確認するということが行われるわけです。
燃焼実験を行う場所は、警察学校の校庭とか、河川敷など、危険がない場所が選ばれます。大規模な燃焼実験を行う場合は、消防署に依頼して消防車を待機させることもあります。犯行時の状況をできる限り忠実に再現し、その内容は写真やビデオ撮影などで記録し、証拠化します。供述通りに再現してみたところ、放火が不可能、あるいは困難、ということになれば、供述の信用性は大きく揺らぎますから、そのまま放置することはできず、新たな捜査が必要、ということになります。
私が経験した燃焼実験で、印象に残っているものがありますので、別のエントリーでお話しすることにします。