放火罪の被告に無罪 大阪地裁「自白信用できぬ」

http://www.asahi.com/national/update/0216/OSK201002160078.html

被告は07年8月、大阪府警の事情聴取に放火を認めて逮捕され、「コンビニエンスストアで万引きが見つかったり、アパートの大家を夜間に訪ねて怒られたりして、いらいらしていた」と供述したとされていた。公判では一転して無罪を主張していた。
判決は、公判での被告人質問でのやりとりなどから、被告には質問内容を理解しないまま迎合的な答えをする傾向が強くあると指摘。検察官の取り調べ状況を撮影した録画映像でも、一度は犯行を否定する発言をしたのに、検察官が心外そうな態度を見せると打ち消した点などからも「自白」は信用できないとした。

上記の録画映像は、取調べの全過程のごく一部を録画したものであったはずですが、当初の自白状況や、その後の検事調べまでの、特に警察での取調べ状況が可視化されていれば、自白の信用性に対する評価が変わった可能性もあるかもしれない、という気がしました。つまり、取調べの全面可視化というものが、捜査機関がこだわるように、真相解明を阻害するというばかりでなく、むしろ、よくある捜査段階自白、公判段階否認という事件にあっては、捜査段階の自白がつぶさに検討されることで、従来は任意性、信用性が否定されていたようなものであっても、そういった諸点が肯定されることにもつながり得る、ということです。こういった点は、欧米で取調べの全面可視化を肯定する捜査官、検察官がよく挙げていることで、日本でも十分検討されなければならないことだと思います。
放火罪は、現場が焼けてしまい自白以外の証拠がなかなか得にくい、難しいタイプの犯罪ですが、今後、大阪地検控訴するかどうか、上級審でどのような判断が示されるのか、事実認定という観点から大きく注目されると思います。