殺人放火無罪、同房の女性「犯行告白」再三報告 北九州

http://www.asahi.com/national/update/0306/TKY200803050354.html

判決によると、窃盗容疑で逮捕された女性が福岡県警北九州水上署の留置場で、被告と一緒になったのは04年6月18日だった。
翌日、県警の捜査員は女性から、その事実を聞いた。26日、殺人放火事件を担当していた特捜班の捜査員が女性を事情聴取。「兄を殺すつもりで殺したわけじゃない」。被告がこう話していたと女性は述べ、後日、供述調書も作られた。
2人は24日まで同じ房で過ごした後、女性が再逮捕されたのを機に7月15日〜9月27日、八幡西署で再び同房になった。計約3カ月間、ほとんどを2人だけで過ごした。
女性は、起訴後も取り調べを受けたが、自身の起訴事実や余罪の調べは4日間だけ。多くは被告に関する聴取に充てられた。「また頑張りましたよ。片岸さんから聞いた話をメモに書いています」。8月9日、女性は取調室に入るなり、捜査員に切り出した。「殺人で逮捕されたらどうするんですか」「完全黙秘して否認するよ」などの会話のやりとりを書いたメモを渡したという。
こうした手法について判決は、代用監獄の身柄拘束を捜査に利用した▽同房者が捜査機関に迎合する恐れがある――などと指摘し、証拠能力を認めなかった。

警察が、供述獲得目的で、他の留置人を「エス」(S、スパイ)に仕立て上げ送り込む、という手法は、昔から使われています。代用監獄(警察当局は、法改正もあり、もう代用「監獄」ではなく留置施設だ、と言うと思いますが)における悪弊、と言えるでしょう。
また、捜査と留置の分離、ということが建前としては言われますが、結局は、両者を管理しているのは所轄では警察署長であり、捜査を有利に進めるため留置施設を最大限利用する、ということも、事件によっては行われることがあり得ます。
昔、ある警察官から聞いた話で、検事であった私に嘘をつくような状況にはなかったので本当の話と思いますが、殺人の嫌疑のある被疑者(別件で勾留中)から自白を得るため、その留置場にいるのはその被疑者だけにして(他の被疑者は他の警察に移すなどして)、夜中に急に照明を消したり、お経を流して聞かせたり、といったことをやった、ということで、そこまでやるかとあきれたことがありました。
私自身は、警察署の中に留置場があるという状態は、便利でメリットがある面もあって、全廃まではする必要がなく、ケースバイケースで利用すべきだ、と思っていますが、管理は警察に委ねず、法務省や、警察以外の機関の管理下におく、といったことは、やはり真剣に検討する必要があるのではないか、と前から思っていて、上記のような事件に接すると、改めてその思いを強く持ちます。