未必の故意

http://www.y-yabe.net/archives/2005/11/post_144.html

で、参考になる指摘がされていましたが、そのエントリーを読んでいて、かつて担当した国選事件(高裁)を思い出しました。
殺人未遂事件で、被告人は原審段階から殺意を否認しており、弁護人の私は、当然のことながら、被告人の主張に沿って控訴趣意書を作成、提出しました。控訴審では、比較的短時間の被告人質問程度で結審し、次回判決となりました。
高裁でのこの種の事件は、控訴棄却になる場合が多く、ほとんど期待はせず判決を聞いたところ、聞き慣れた「本件控訴を棄却する。」ではなく、いきなり「原判決を破棄する。」と来たので、一瞬、耳を疑いました。原判決よりも6か月ほど減刑されていました。
その後、よくよく判決を聞いてみると、原判決が確定的故意を認定したのに対し、控訴審では未必の故意が認定され、控訴理由はその限度で理由があるとされて原判決が破棄されたものでした。減刑理由の大きなものは、確定的故意までは認定できないことだったと記憶しています(他の事情は原審と控訴審で変わらず)。
この事件を振り返ってみると、やはり、確定的故意と未必の故意で、情状面でも異なるものと考えられていることがわかります。
ただ、理論的には正当性があっても、裁判員制度導入という時代の流れの中で、プロの法曹にしか理解が困難な刑法理論や刑事実体法というものも考え直して行かないと、必然的に刑事司法や裁判員制度が行き詰まるという事態に陥るでしょう。