<陸山会事件>小沢氏、2審も無罪…東京高裁判決

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121112-00000009-mai-soci

控訴審の争点は▽04年の土地購入時に代表が提供した4億円を記載せず、土地購入についても04年ではなく05年に先送りした陸山会の04、05年分政治資金収支報告書の記載内容は虚偽か▽代表は記載が虚偽と認識していたか−−など。
高裁判決は土地の「資産」としての記載先送りについて、秘書だった石川知裕衆院議員が05年1月に土地登記を先送りしたことで実際の取得時期も先送りできたと思い込んでいた可能性に言及。「1審の判断は論理則・経験則などに照らし不合理」と指摘し、この件での虚偽記載の故意を認めなかった。4億円の簿外処理については「1審の判断はおおむね是認できる」とした。
石川議員が代表に事実と異なる説明をしたとされる点については「実際には改めて報告しなかった可能性がある」と判断。代表が記載を虚偽と認識していなかったとした1審の判決に影響を及ぼす事実誤認はないとした。

私自身の、1審判決に対する総括的な評価は、

見立て固執した検察幹部 小沢元代表無罪判決
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20120429#1335708595

でコメントしたように、

状況証拠の評価が有罪方向に暴走し過ぎで踏み込み過ぎている、と感じていますが、その判決ですら、犯罪成立を妨げる認識を小沢氏が持っていた可能性は肯定せざるを得ず、無罪判決(これは本件の証拠構造上は必然的なものであったと思いますが)を導くしかなかった

というものでしたが、「状況証拠の評価が有罪方向に暴走し過ぎで踏み込み過ぎて」いた1審判決では、

小沢元代表裁判「判決骨子」全文
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20120426#1335428300

でコメントしたように、

本件土地公表の先送りや本件4億円の簿外処理について、石川ら秘書が、被告人に無断でこれを行うはずはなく、具体的な謀議を認定するに足りる直接証拠がなくても、被告人が、これらの方針について報告を受け、あるいは、詳細な説明を受けるまでもなく、当然のことと認識した上で、了承していたことは、状況証拠に照らして、認定することができる。
さらに、被告人は、平成16年分の収支報告書において、本件4億円が借入金として収入に計上されず、本件土地の取得及び取得費の支出が計上されないこと、平成17年分の収支報告書において、本件土地の取得及び取得費の支出が計上されることも、石川や池田から報告を受け、了承していたと認定することができる。

とされた上で、「犯罪成立を妨げるような認識を持っていた可能性」があるので無罪、というロジックで判断していました。
そういった1審判決について、全文はまだ見ていないのですが、上記の記事によれば、控訴審判決では、報告や了承、といった、1審判決が状況証拠で強気に(強気すぎたと思いますが)認定していた外形事実を、ほぼ否定しているようであり、この種の事件における事実認定として、本来の、落ち着くべきところに落ち着いた、という印象を受けます。おそらく、東京地検による嫌疑不十分とした不起訴裁定書(第1次も第2次も)でも、控訴審判決とほぼ同様のロジックであったものと推測されます。
そこでやめておけばそれで済んだものを、これだけ皆で大騒ぎして、手間も時間も金(公費)もかけまくり、出た結論が、結局、やめておけばよかった、ということを確認しただけ、ということに、空しさや徒労感、こうした壮大な茶番劇を生んでしまった改正検察審査会法の強制起訴制度への不信感を感じているのは、おそらく私だけではないと思います。これを契機に、主権者が関与するのが尊い、といった空疎な建前論で終始するのではなく、実効性もあり被疑者や被告人へも無用な負担をかけない制度の見直しや改革ということも現実問題として真剣に考える必要があるでしょう。