ファッション紹介サイト「無断掲載は肖像権の侵害」

http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20050927i419.htm

判決によると、問題のサイトは、街を歩く人のファッションを写真で紹介しており、女性は2003年7月、銀座で歩いているところを無断で撮影された。その後、別の掲示板サイトで、この写真をもとに女性を中傷する書き込みが行われた。

この種の事例は、報道で街の風景を撮影する場合などに起こりやすくなります。
本人の承諾がなく、本人が特定できる態様で撮影されていれば、やはり、原則として肖像権侵害という判断にならざるを得ないと私は考えています。
例外としては、例えば、代替性が乏しい場面(事件・事故やイベントなど)について撮影したところ本人が特定できる態様で映ってしまった場合など、限定されたものになるでしょう。

追記1:

この問題点について、ちょっと調べてみました。大きく分けて、

1 公共の利害に関する事項か、公益を図る目的か、公表された内容が相当か、という観点で決すべきとする考え方
(新・裁判実務体系「名誉・プライバシー保護関係訴訟法」296頁、大家重夫教授執筆部分)
2 私的生活領域か公的生活領域かでまず区別し、私的生活領域におけるものは撮影・公表等が許容されず、公的生活領域におけるもののうち、一般人が通常取っている行動であってその行動自体が撮影されることに心理的負担を覚えない形態での撮影・公表等であれば許容されるとする考え方
(竹田稔「プライバシー侵害と民事責任(増補改訂版)」266頁)

という2つの考え方があるようです(他にもあるかもしれませんが、私の手元にある資料を見る限り、です)。
上記の2の考え方も、確かに魅力的で、表現の自由を尊重する考え方だと思います。上記のニュースで問題となったような事例にこの考え方を適用した場合、「公的生活領域におけるもので、一般人が通常取っている行動であってその行動自体が撮影されることに心理的負担を覚えない形態での撮影・掲載」であるとして許容される余地も出ると思います。
しかし、「公的生活領域か私的生活領域か」の区別が、特に限界においては困難と思われますし、公的生活領域の範囲を広く取りすぎれば、結局、肖像権やプライバシー権の軽視につながりかねないという危険性があるということは言えるでしょう。
私見では、やはり、当面は、上記の1のような基準に照らして判断して行くしかないのではないかと考えており、本人の承諾がなく、本人が特定できる態様で撮影されていれば、原則として肖像権侵害という判断にならざるを得ないと考えます。
上記の記事では、

判決は、「ファッションを紹介する公益性は認められるが、本人が特定できる全身写真を掲載する必要はない」と述べた。

とありますが、1の考え方に立つ場合、本件のような事例における本人が特定できる全身写真の掲載は、相当性の点で正当化が困難ということが言える(あくまで一般論ですが)と思います。
ただ、上記1の考え方も、窮屈ではあり、今後とも、より適切な基準の定立を目指す必要があるとも感じています。

追記2(2007年6月20日記):

上記の追記1を書いた後、最高裁判例が出ています。

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20051111#1131641206

上記の1や2とは異なる基準ですが、2の考え方も取り入れている面があります。この問題を考える上で、実務上は、上記の最高裁判例を中心に据えて考えるべきでしょう。