某雑誌から、ストリートビューに関する取材を受けました。私のほうでは、概略、以下のように述べました。
ストリートビューが、従来、存在したものとは大きく異なるのは、撮影対象が極めて網羅的で広範囲にわたっていることと、それを目にする人々が極めて広範囲にわたっていることであると思う。従来存在した、例えば防犯カメラでも、肖像権やプライバシー権の侵害、といったことが問題にされてきたが、防犯カメラの場合、撮影対象は自ずと限定される上、撮影目的も撮影されたものを見る者も限定されている。しかし、ストリートビューには、そのような限定がなく、従来存在したものとは異質なものである。
人は、公道から見えるからといって、肖像権やプライバシー権を放棄しているわけではない。例えば、ラブホテルに入ろうとしているカップルは、そのような姿をできるだけ他人に見られたくない、という意識を強く持っている場合が多いと思われるが、そういった情報は、公道から見えるからといってプライバシー性や法による保護を喪失しているわけではない。
このような事情があるにもかかわらず、あらゆるものを網羅的、無差別に撮影し、不特定多数の閲覧に供することは、それ自体、権利侵害の恐れが強い行為と評価でき、撮影されたものについて画像処理を行い個人等が特定されない措置を講じているとしても、撮影された対象や撮影状況から、一定範囲の人にとって個人等が特定可能であれば、プライバシー権侵害の問題は生じるし、そういった処理をしているからといって直ちに免責されるとは言えない。
グーグルは、問題がある画像については申告してほしいと呼びかけているが、事後に申告があれば迅速に削除措置を行うからといって、肖像権やプライバシー権の侵害がさかのぼって治癒されるものではなく、このサービスの本質的な問題が解消されるわけではない。
同意なくストリートビューに撮影されたことが、権利侵害に当たらず適法とされるケースとしては、例えば、公的な機関に出入りする公人が撮影されている、といったことが考えられるが、純然たる個人が撮影されてしまいその個人が特定されるような状況にある、という場合に、それが適法とされるということは考えにくいのではないか。
このサービスの評価としては、非常に便利で役立つものであると同時に、上記のような問題点を内包していて、大きな問題も抱えている、ということは言えると思う。