刑事の控訴審

最近、1審で有罪判決を宣告され、「納得できないので控訴審での弁護を依頼したい。」という人からの相談が増加気味です。
対応できる場合は、できるだけ対応するようにしていますが、そういった相談を受けていると、
1 1審で依頼していた弁護士は刑事事件を知らない人だった、依頼して失敗した
2 1審で依頼していた弁護士にこういう立証をしてほしいと言ったのがしなかった
3 私は、本当はこういうことを言いたかったのに、言えなかった
といった不満が、必ずと言ってよいほど出ます。
1については、現状では、弁護士に関する情報があまりにも不足していて、そういう中で適切な弁護士を探し出すことの困難さを現していると言えるでしょう。私の場合、取り扱い分野が比較的はっきりしているので、依頼があっても、取り扱わない分野であれば、その分野に詳しい知人の弁護士等を紹介することにしていますが、そういうことをしない弁護士のほうが多い(何でも自分で取り込んでしまう)ようです。対策としては、インターネットを活用するなどして、刑事事件に詳しい弁護士を徹底的に探すしかないでしょう。どうしても巡り会えない場合は、自分が住んでいる地域の弁護士会に「刑事弁護委員会」というものが必ずありますから、そういったところに相談してみるのも一つの方法ではないかと思います。
私の場合、「刑事事件セカンドオピニオンサービス」ということもやっていますが、そういったサービス提供ということも、今後、もっと広がってもよいのではないかとも思います。
2については、控訴審段階でそういった相談を受けると、受けたほうも非常に難しい問題を抱えることになります。刑事の控訴審では、1審の段階で請求可能であった証拠を控訴審で初めて請求することが基本的に許されておらず、「やむをえない事由」がある場合に例外的に可能になるということになっています。「1審で弁護士と意見があわなかった」といった事情は、やむをえない事由とはみなされません。立証したいことは、極力、1審の段階で立証しておかないと、控訴審ではできなくなってしまう恐れが大きいのですが、このことを知っている人は皆無です。
3については、端的に言って「コミュニケーション不足」でしょう。その弁護士の仕事の進め方(残念ながら「俺は弁護士で偉いんだぞ」といった姿勢でふんぞり返った進め方をする場合が多い)や、そもそもコミュニケーションをきちんととるほど刑事事件に詳しくないといったことなど、様々な原因によるものと思われます。対策としては、聞きたいこと、説明してほしいことは、辛抱強く質問し説明を求めて、そういうことにきちんと対応しない弁護士は、思い切って解任することも検討したほうがよいでしょう(ただ、余計なお金がかかるなど問題はあるのですが)。
やはり、1審の段階から、1について述べたように、適任の弁護士を探して依頼する、ということが必要ではないかと思います。