示談書の取り扱い

http://ppnn.269g.net/article/266908.html

検察官の手元に、示談書がある場合の取り扱いが論じられています。

前提として、刑事事件の関係で示談書を作成した場合、弁護人としては、検察庁に原本は提出せず、写しとか、写しを添付した弁護人作成の報告書を作成、提出するというのが「固い」方法だと思います。
ただ、示談書の作成が、専ら、あるいは主として、刑事事件における寛大処分を目指したものであれば、示談書の原本を検察庁に提出する、ということも行われるでしょう。その場合であっても、弁護人の手元に少なくとも示談書の写しは残っているのが通例だと思いますが、原本は検察庁にある、ということになるので、その取り扱いが問題にはなり得ます。

私個人の意見としては,示談書を最初からは提出すべきではないと思います。まず犯罪事実の立証を最小限の証拠で迅速に済ませるべきだからです。その後,情状面の立証(主に弁護人が中心になりますが)のときになって初めて提出すればよいのではと考えています。

上記のブログでは、このように論じられていますが、私が検察官なら(同様のケースは何度か経験しましたが)、示談書の内容が確認済みで、内容に問題がないものであれば、弁護人の意向を確認し、「証拠調べ請求してほしい。」ということであれば、当初から証拠調べ請求すると思います。事件の内容や被害者側の感情等から、そういった方法に問題があれば、弁護人に、「検察官の手元に示談書がある」という前提で証拠調べ請求してもらって、検察官としては同意した上で、手元にある示談書を取り調べてもらう、という方法もあり得ると思います。
示談書の内容自体に問題がある場合(被害者の真意を反映しているかどうか疑問、など)は、弁護人に、問題点を告げた上で、請求するかどうかは弁護人に検討してもらい、もし請求があれば、部分同意(問題がある部分に限定して不同意とし、その余は同意する)の活用も含めて検討し、採用された部分があれば、原本を裁判所に提出する(証拠になるのは同意があった範囲内)ということになると思います。
原本にこだわらず、弁護人が示談書の写しを請求してくれば、その写しについて、検察官として意見を述べる、ということもあり得るでしょう。
弁護人が、示談書の存在に気付かないまま公判が進行するということは、考えにくいですが、捜査段階と公判段階で弁護人が異なっていて、公判段階の弁護人が調査不十分ということもあり得ないわけではなく、そういった場合は、検察官から弁護人に対して、「示談書がありますが、どうしますか?」と告げて注意喚起するのが、公益を代表する検察官としてのあるべき姿でしょう。