進路に関する相談

今日の日経新聞私の履歴書」に、免疫学者の石坂公成氏が、基礎医学の道へ進もうと考えたときのことが紹介されていた。親族のほとんどが反対し、義兄と叔父の石坂泰三氏(元経団連会長)の2人だけが賛成していたとのことである。公成氏は、初志貫徹して基礎医学の道へ進み、大成して、文化勲章まで受章したが、その伝達式の後、病床にあった泰三氏のもとに駆けつけ、受章を報告したところ、泰三氏は大変喜んで、「これで兄さんによい土産ができた」といって涙ぐんでいたとのことである。公成氏の父が、泰三氏の兄にあたり、その人は、公成氏が基礎医学の道へ進むことを心配していたので、泰三氏は自らのアドバイスについて責任を感じていたのだろう、というのが「私の履歴書」での公成氏の述懐であった。
他人から進路に関する相談をもちかけられ意見を言うのは非常に難しいことである。うかつなことは言えないし、何も言わないことは、迷って意見を求めてきている人の期待に沿えないことになる。責任を取るといっても限界があるが、石坂泰三氏のように、甥へのアドバイスを、ずっと気にかけて責任を感じている、というのは、一つの誠実な態度ではないかと感じた。