NHKスペシャル「司法大改革・あなたは人を裁けますか(2)」


昨夜に続いて、今夜の番組も見ました。
昔読んだ大岡昇平の「事件」で、元裁判官の弁護士が述懐していましたが、刑事裁判で、当事者(検察官、弁護士)には目標があり、気分的に楽な面があるでしょう。検察官は、起訴した事件について有罪認定と求刑に近い量刑を目指し、弁護士は、できるだけ被告人に有利な判決を目指す。それに対して、裁判官には、当事者のような目標がなく、難しい事件であればあるほど、行きつ戻りつしながら、迷いさまよう日々を送るという面は確かにあると思います。
模擬裁判で裁判長を務めていた、横浜地裁の山崎裁判長は、私も、東京地裁でのある事件で接したことがありますが、当事者の意見をよく聞きながら、手堅く訴訟を進行させるタイプで、何となく愛嬌もあり、話もわかりやすいほうなので、ああいったタイプの裁判官は、裁判員制度向きだと思います。しかし、そういう裁判官は、全体の中ではおそらく少数派でしょう。
裁判員も、番組で紹介されていた模擬裁判に登場していたような、意欲も能力もある人ばかりとは限りません。書証を中心に立証する「精密司法」である現行の刑事訴訟についても、現状では抜本的な見直しまで行われる気配はありません。
番組を見ていて感じたのは、理想的な裁判員制度というものは、非常に魅力的であることは間違いないものの、現実の裁判員制度が、どこまで理想に近づけるか、前途は非常に多難だろうということでした。