司法修習生の不祥事について思うこと

東京地裁で実務修習中の司法修習生が、女子トイレ内に盗撮カメラを仕掛けたということで建造物侵入罪により逮捕された事件が波紋を広げているようである。正直言って、私も驚いた。
確かに、裁判官、弁護士でも、破廉恥な事件を起こす人がいるし、司法修習生の大部分は、こういった不祥事とは無縁で、まじめに修習しているはずである。
ただ、法曹関係者の過去の不祥事を見ていても、私生活上の非行とか、金銭絡みの不祥事というものが多く、勤務時間中に自分の職場の女子トイレ内に侵入してカメラを仕掛ける、という、大胆不敵な(?)犯行に及んだ、というものは、稀と言っても過言ではないと思う。司法試験合格者というプライドも、悪事に対する躊躇もなく、自分の欲望の赴くままに行動する、という邪悪な人間性を強く感じ、一種の恐怖のようなものを感じる。
司法試験で、人間性とか人格といったものはテストされないので、そういった点で問題のある人物が合格者の中に紛れ込む危険性というものは、以前からあったと言える。ただ、ハードルが極めて高いということにより、女子トイレの中にカメラを仕掛けるような人間(そういう人間が真面目で勤勉であり「そこだけ」問題があるということも考えにくい)を、間接的に排除していた、という側面はあったと思う。ハードルが下がってくれば、間接的に排除されていた、問題のある人物が、何かの拍子に紛れ込んでしまう、ということも出てくるであろう。
また、司法試験合格者が500名程度しかいなかった時代は、合格者にも希少性があり、それなりに尊敬もされ、合格者側にも、そういった周囲の目を意識しつつ、他人から指弾されないように注意するという意識が働いていたと思うが、合格者が1000名になり、1500名になり、さらに3000名になって、どこかの法科大学院の先生の主張では5000名でも多すぎない、といった状況でどんどん増えれば、希少性や尊敬度も下がり、良い意味で働いていた自制心も働かなくなって、問題行動へとつながる、という傾向が、今後強まる可能性が高い。
対策としては、所属する組織等がしっかり指導監督し、非行については厳しく処分する、といったことしか思い浮かばないが、法曹人口の増加に伴う負の側面とも言え、暗い気分になってくる。

追記:

上記の事件は、その後、不起訴処分(嫌疑不十分)になったとのことであり、その意味では、このエントリーは的はずれなものではありますが、この時点での率直な感想ということで、敢えて残しておきます。その点、読まれる方はご注意下さい。