財団法人ソフトウェア情報センター専務理事の山地克郎氏が講演

P2P著作権保護はどこまで可能か
http://chizai.nikkeibp.co.jp/chizai/gov/20041213.html
P2Pの構造差が侵害訴訟で大きく作用
http://chizai.nikkeibp.co.jp/chizai/gov/20041215.html
P2Pによる著作権侵害が日本国内で急増
http://chizai.nikkeibp.co.jp/chizai/gov/20041217.html

著作権侵害が認定された集中型「Napster
 集中型ソフトウェア「Napster」に対して,全米レコード協会(RIAA)は1999年12月に著作権を侵害しているとして提訴した。さらに,2000年6月には他の団体などと共にサービスの仮差し止めを求めて提訴した。これを受けて,米国連邦地裁は2000年7月に「Napster」の業務停止を仮決定した。2001年2月には連邦高裁が「Napster」による著作権侵害を認定し,直後に和解案を提示した。
 侵害認定では,「ソフトウェア利用者の情報(曲/アーティスト/アドレス)を集中的に蓄積した「Napster」が独自に所有するクライアント・サーバを通じたファイル交換は,米国著作権法上の『フェアユース(Fair Use)』に該当しない違法行為」とされ,「Napster」には,侵害になることを知りつつ他者の侵害行為を積極的に誘因し,または重大な寄与をしたとする「寄与侵害責任」と,他者の侵害行為を支配する権限と能力があり,侵害行為による直接の経済的利益があったとする「代位責任」が認められたのである。
 ちなみに「Napster」は,2002年にソフトウェア・メーカーRoxioに全資産を買収され,その後,Roxioは有料化・合法化した上で新たなサービスとして運営している。

分散型は多くの訴訟で「開発者,提供企業に責任なし」
 一方,分散型のソフトウェアには以下のような司法判断が下されている。
 第1に,「KaZaA」に対する判断がある。このソフトウェアは当初オランダで開発されており,オランダ国内で訴訟が起きた。2002年4月にオランダ上訴裁判所は,「ソフト開発者が法的に責任を負うことはない」と判断した。なお,「KaZaA」はその後オーストラリア企業に買収され,さらにバヌアツで法人登録されている。利用者数は270万人,ソフトウェアをダウンロードするためのサーバは著作権規定が非常に弱く「コピーライト・ヘイブン」と評されるエストニアに置かれている,といわれる。
 第2に,「Grockster」に対する判断がある。2001年10月,米国において映画会社,レコード会社,音楽出版社が提訴した。これについてロサンゼルス連邦地裁は2003年4月に,「ファイル交換ソフトウェアの提供会社に違法性はない」との判決を下した。2004年9月には連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)が「Grockster」のネットワーク運営を合法とする判決を下している。

この記事は、うまくまとまっていてわかりやすいと思いますが、上記の引用部分を見ていると、改めて、京都地裁で審理中のwinny幇助犯公判の、国際的に見た場合の「突出性」が際だちます。
こういったサイバー犯罪については、国際的な協力の下で、上記のような「著作権規定が非常に弱くコピーライト・ヘイブンと評されるエストニア」のような国、地域をなくして、隠れ家、逃げ道を封じるともに、ある行為を突出して処罰するようなことも控えるような方向で法整備、捜査・司法共助を進めないと、犯罪地による不公平な取扱いを招くことになりますし、捜査・司法共助にも支障を来す可能性が高いでしょう(例えば、A国で処罰されていない行為について、処罰されているB国からの捜査・司法共助要請があった場合に、A国としては当然には応じかねるでしょう)。
サイバー犯罪については、このような視点も必要であるような気がします。