「P2Pシンポジウム」(その1)

午後の2つのシンポジウムの中の一つ。岡村久道弁護士の司会で、奥村弁護士2ちゃんねるの「ひろゆき」氏も出席しており、大変豪華な顔ぶれです。
立教大学の上野達弘氏、慶應義塾大学の苗村憲司氏も出席されています。会場の人も多く、この問題に対する関心の高さが伝わってきます。
岡村弁護士から、P2Pに関するアメリカの判例について紹介された後、上野氏から、日本における民事判例についての説明がありました。
上野氏は、著作権侵害を利用とする、サービス提供者に対する差し止めの可能性について、
1 サービス提供者も物理的な意味での発信者である(判例は見当たらない)
2 サービス提供者も、規範的には発信者と同視できる(クラブキャッツアイ事件がその例、カラオケ業者に関する事件が多い「カラオケ法理」、ファイルローグ事件、録画ネット事件)
3 サービス提供者は違法行為の幇助者である(従来は多数説ではなかったが、平成15年2月13日のヒットワン事件判決で大阪地裁が採用)
という3つの理論構成を紹介の上、説明されました。
「カラオケ法理」については、ファイルローグ事件や録画ネット事件で、変容して適用されているという指摘の上、そもそも擬制的であるという批判があり、再検討が必要ではないか、とも指摘されていました。
3について、東京地裁は、大阪地裁とは反対の立場をとっており、肯定説が定着しているわけではないことも指摘されていました。
また、損害賠償請求について、いかなる場合にサービス提供者が責任を負うかについて、従来の裁判例も一定の傾向があるわけではなく、判断にはブレが見られることも指摘されていました。

(続く)