安冨潔・刑事訴訟法(第2版・三省堂)

刑事訴訟法 第2版

刑事訴訟法 第2版

慶應義塾大学の安冨先生による刑事訴訟法の第2版です。三省堂から1冊贈っていただきました。ありがとうございます。間もなく発売ですが、事務所用と研究室用で、2冊あると便利なので、自腹でも1冊購入予定です。
私は、法科大学院刑事訴訟法の講義を担当するようになって3年が経過し、今年も担当しているのですが、当初から、教科書はこの刑事訴訟法を指定して使っています。使っていて感じるメリットとしては、

1 叙述が平明でわかりやすく読みやすい
2 判例最高裁だけではなく下級審のものも)、学説の紹介が丁寧
3 実務への目配りが随所に盛り込まれている(著者が弁護士登録もして実務にも携わっていることによるところが大きいでしょう)

があり、帯に「初学者でも読める 実務家でも使える」というのは、正にその通りだと思います。私が司法試験受験生の頃は(昭和58年から昭和61年当時のことですが)、このような行き届いた教科書がなく、こういった教科書を使って勉強できる、今の学生、受験生がうらやましい気がします。
司法試験を目指しているような学生、受験生にとって、本文で650ページ余りという分量は、分厚く負担に感じるかもしれませんが、良質な講義を聴くことで、どこをどのようにメリハリをつけるべきかは見通しがつくものですし、薄くて中途半端な本を読んで、後から、あれもこれもと切り貼り的に補充するよりは、こういった充実した内容の本を読みこむほうが、結局は目標到達への近道になるように思います。
初版よりは数十ページ分量が増加し、著者が得意とするサイバー犯罪に関する箇所(電磁的記録の押収等)も、より充実した内容になるなど、読みやすさ、わかりやすさは維持しつつ、内容の充実が図られていて、必要なアップデートが施されています。
他にも優れた類書はありますが、法学部生、司法試験等の国家試験受験生から司法修習生、法律実務家まで、幅広く、長く使える、お勧めできる1冊です。

2013年06月03日のツイート

なぜヤフーのマリッサ・メイヤーは、ネットポータルに回帰するのか

http://wired.jp/2013/06/02/marissa-mayer-makes-portals-fashionable/
http://wired.jp/2013/06/02/marissa-mayer-makes-portals-fashionable/2/

誰もが知っているとおり、ヤフーには全世界を支配するFacebookのようなソーシャルネットワークはない。Google+のようなまあまあのサーヴィスすらない。だから、ヤフーはさまざま場所(FlickrやYahoo Mail、Yahoo Financeなどなど)に分散するユーザーの情報をかき集めなくてはならない。また、新たなサーヴィスを追加することで、このユーザー情報の蓄積をさらに拡大させることへのインセンティヴもヤフーにはある。Tumblrには、若くてコンピューターに詳しいユーザー層がどんなことに関心を持っているのかがわかる貴重な情報がある。またSummlyには、モバイル端末のユーザーが関心を持つニュースについての情報がわかるデータがある。今後Huluの獲得に成功すれば、同サーヴィスの契約者がどんな番組を好むかなどに関する知見を手に入れられることだろう。そして、こうした情報源はヤフーの広告配信先としても役立つことになる。

この記事で、見落としていると感じるのは、いくら、いろいろなサービスを買収してかき集めても、かき集めたものがユーザーに「見られる」存在にならなければ、ユーザーの様々な属性、関心等に関する情報を収集できず、それを利用して広告を配信することも難しいだろう、ということですね。今更、「ネットポータル」を、ネット生活の中心に据えようという人が増えて行くとは考えられず、ソーシャル化の流れに、ポータル化で抗しようとしても、落ちて、縮むだけでしょう。
むしろ、ヤフーインクが目指しているもの、目指すべきものは、買収した、買収するサービスを「ソーシャル化」という点でうまく結合させて、ネットポータルから脱却し、従来のサービスも、一旦ばらばらにしてソーシャル化したサービスの中に組み込む(組み込めないものは思い切ってやめてしまうか売却する)、という、思い切った手を打つことでしょう。そのためには、持ち駒がないと前に進めないため、手持ち資金をフルに使って、使えそうなサービスを買い集めているのが今だと思います。生き残れるかどうかの瀬戸際に立っているということでしょう。