客室乗務員の英語力も足りず…スカイマークに改善勧告へ

http://www.asahi.com/national/update/0406/TKY201004050464.html

同省関係者によると、ほかにも操縦室内で機長らが酸素マスクの着用ルールを守っていなかった▽CAが客室内の保安検査を適切に実施していなかった――など、乗務員の安全意識の不足や会社の運航実態の把握が不十分なことによる不備が監査で見つかった。また、乱気流に遭遇した機体の構造点検が適切になされていないなど、整備部門でも問題が見つかったという。

こういったスカイマークの問題は、スカイマーク固有のものではなく、格安航空会社がたどりがちなものとして捉えておく必要があるのではないかと思います。安い料金で利益を出そうとすれば、省力化、コスト削減が至上命題になり、そういった中で「安全」もおそろかになる危険というものを、いかに克服するかが課題という気がします。国土交通省のような「お上」に依存するのではなく、第三者機関が、定期的に、必要に応じて不定期に、徹底的にチェックして結果を公表するような仕組みも必要でしょう。

【人】大阪地検特捜部長に就任 松田一郎(まつだ・いちろう)さん

http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/100405/trl1004052209006-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/100405/trl1004052209006-n2.htm

理想の検事像を、測量にたとえてこう表す。一歩ずつ進み、地形や草木を丹念に見る。あるいはアングルを引き、全体を俯瞰(ふかん)する。「両方の力を備える検事でありたいし、そういう若い検事と仕事ができれば幸せ」。

私が広島で修習していた昭和63年当時、広島地裁で、広島大学総合科学部長殺害事件の審理が行われていて、新特捜部長(当時は新任明けの検事)がその公判に立ち会っているのを傍聴した記憶があります。その当時は、刑事部長が、後に検事長になった大塚清明氏で、

元名物検事長、後進に託す「捜査いろは唄」 心得47首
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20080827#1219786922

その後、検事に任官し新任明けの3年間を徳島地検で勤務した私が、関西検察独特の雰囲気も味わって、法曹としての基礎形成期を過ごしたことが、改めて感じられます。
新特捜部長には、「一歩ずつ進み、地形や草木を丹念に見る。」という姿勢を、今後の捜査に是非とも生かしてほしいと思います。そこでは、最近の検察捜査に対する批判に謙虚に耳を傾けることも必要でしょう。

最高裁、再審判断を高裁に差し戻し 名張毒ブドウ酒事件

http://www.asahi.com/national/update/0406/TKY201004060265.html

最高裁は、殺人などの罪で死刑が確定した奥西勝死刑囚(84)の再審を認めるべきかどうかの判断を改めて名古屋高裁に差し戻す決定をした。5日付。第三小法廷(堀籠幸男裁判長)は「犯行に使われた毒物の解明について、審理が尽くされていない」と述べた。
いったん認められた再審開始と死刑の執行停止を取り消した名古屋高裁の決定を、改めて取り消した形になる。事件発生から半世紀。最終的に再審を認めるべきかどうかは、毒物の成分をめぐる科学論争に絞って、さらに同高裁で審理が続くことになった。

本件については、再審開始決定について、

名張事件第7次再審請求審 再審開始決定(要旨)
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20050406#p1

異議申立に対する取消決定について、

再審開始決定取消す 名張毒ブドウ酒事件で名古屋高裁
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20061226#1167101373

とコメントしたことがあります。
再審開始決定について、私としては、

使用された毒物が、確定判決認定の「ニッカリンT」であったことについて合理的な疑いが生じていることと、犯行の機会が確定判決認定の機会以外にもあり得たのではないかという合理的な疑いが生じていることが、この決定が出る上では決定的であると思います。

と見ていて、取消決定では、上記の取り消しの際のエントリーで引用したように、

最大の争点は、事件の農薬が、奥西死刑囚が自白し、確定判決が凶器と認定したニッカリンTだったかどうか。ブドウ酒の飲み残りからニッカリンTに必ず含まれる成分が検出されなかった理由などが争われた。異議審は今年9月、この問題で弁護団の鑑定をした2教授を証人尋問。そして「ニッカリンTが混入されてもこの成分が検出されないことはあり得る」などとして、検察側の主張を認めた。

とされましたが、最高裁としては、使用された毒物について、確定判決の認定に対する合理的な疑いが払拭できないという心証を持ちつつ、再審開始決定まで踏み切る前に、その点に関する検察官の立証を尽くさせておく必要があるという、非常に微妙な判断を示したのではないかという印象を受けるものがあります。
最高裁がどのような心証を抱いたかは、決定を見ないと何とも言えませんが、今となっては検察官の補充立証で、合理的な疑いが払拭できない可能性も高く、そうなれば、本件は必然的に再審へと動いて行くことになるでしょう。

追記1:

名張毒ぶどう酒事件>再審の可能性も…最高裁が差し戻し
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100406-00000036-mai-soci

小法廷は「混入されたのがニッカリンTではなかったのか、濃度が低く成分の反応が弱かったために成分が検出されなかっただけなのか、高裁が科学的知見に基づく検討をしたとは言えない」と指摘。ニッカリンTを使って捜査段階と同じ方法で鑑定を行い、審理を尽くすよう求めた。

そのような鑑定を行うことで、確定判決で認定されたニッカリンTの使用という認定に、合理的な疑いを入れる余地がないと言えるかどうかが問題になりますが、それができるのであれば異議申立審の決定までに、検察官が行っているのではないかと思われ、印象としては、再審へ大きく傾いた最高裁決定ではないかと思いますね。

追記2(平成23年3月18日):

上記の最高裁第三小法廷平成22年4月5日決定ですが、判例時報2090号152頁以下に掲載されていました。
一通り読んでみましたが、要するに、重要な争点について、追記1でコメントしたように、科学的知見に基づく検討が行われるべきであるとしたもので、再審へ大きく傾いたものではないにしても、その点について最高裁が重大な関心を抱いたことはうかがわれるように思いました。
既に、決定から1年近くが経過していますが、その後の名古屋高裁での審理状況が気になるところです。