吹き抜け 女児転落死 マンション屋上遊び中

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2009032202000049.html

屋上には吹き抜けがあり、同署は彩花さんは戻ろうとして、吹き抜けから約十五メートル下の二階部分に誤って転落したとみている。

七階廊下の一部にある高さ約一・二メートルの塀を乗り越えれば、屋上に立ち入れる構造になっており、立ち入り禁止の表示があったという。吹き抜けは、このすぐそばにあり、広さ約三平方メートルの台形状で、高さ約〇・六メートルのコンクリート製の囲いがあった。

不幸な事故で、亡くなった方はお気の毒というしかありませんが、こういった記事を見ると「その後」を考えてしまうのが法律家というもので、民法上の土地工作物責任が問題になり子供が容易に入り込めるような構造、状態になっていたことが建物の「瑕疵」と捉えられ、マンションの管理組合が多額の損害賠償義務を負う可能性、ということを考えてしまいました。
こういった危険な箇所では、単に立入禁止の表示をするだけでなく、人が物理的にも入り込めないような措置(塀を高くするとか鉄条網で仕切るなど)を講じておく必要があると思いました。

【主張】闇サイト殺人 常識に沿った死刑判断だ

http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090319/trl0903190309002-n1.htm

死刑適用の基準とされているのが、ピストルで4人を射殺した永山則夫元死刑囚の判決で、最高裁が昭和58年に示した「永山基準」である。下級審はこれを判例として、この基準に沿って判決を言い渡してきた。
永山基準は(1)犯罪の性質(2)動機(3)殺害方法(4)被害者数(5)遺族の被害感情−など9項目をあげ、総合的に考慮して、判断するというものだ。とくに被害者数が重要視され、これまでの下級審では、1人の場合は死刑を回避する傾向が大半だった。
最近の例でも東京都江東区の女性殺害遺体切断事件の判決で、東京地裁は「死刑は重すぎる」とし、無期懲役を下した。素人の国民にとっては、被害者が1人なら死刑にはならないという風潮さえ生まれているのが現実だ。
今回の判決で、名古屋地裁近藤宏子裁判長は、社会常識に沿ったごく自然で当然の判断を下したものと評価したい。
このところの犯罪は、凶悪化が顕著で、ネットを利用した匿名性の高い犯行などその質も多様化している。最高裁は、26年も前の永山基準を見直し、裁判員が納得できる明確な死刑基準を示す時にきている。

永山判決で示された基準は、「とくに被害者数が重要視され」たものとは言えないでしょうね。むしろ、その後の死刑か無期かが争われた事件の中で、やや、被害者数にウェイトを置いた判断が示されてきた、というのが実情ではないかと思います。その点は、最近の厳罰化の流れもあって、徐々に修正されていますが、上記の記事にあるように、「被害者が1人なら死刑にはならないという風潮さえ生まれているのが現実だ。」などという「現実」があるとは思えず、被害者が1名であっても死刑になる場合もあればそうならない場合もあって、名古屋の事件は前者、江東区で発生した事件は後者と見るべきでしょう(あくまで、現時点では1審の判断ですが)。
犯罪の凶悪化に対しては厳罰化で対処する、というのは、よくある一つの主張ですが、厳罰化というものをどこまで推し進めれば良いのか、本当に厳罰化が犯罪抑止につながるのか、といったことについても、慎重に検討しないと、刑事裁判というものが、ますます復讐を目的としたもの、人々の処罰感情を満足させる場へと変容し、国家刑罰権というものをいかに行使すべきかという理性的、冷静な判断が困難になる危険性がますます増大する恐れがあります。裁判員制度というものも、使い方を間違えれば、日本の刑事裁判を取り返しがつかないレベルまで退化させてしまうということになりかねないでしょう。

時効まで1カ月 東京・井の頭公園の切断遺体事件

http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/090322/crm0903221557011-n1.htm

事件は6年4月23日に発覚。井の頭公園内の数カ所のごみ箱に、ポリ袋に入った切断遺体が捨てられているのを清掃員が発見した。
警視庁によると、ビニール袋を持った不審な2人組の男が公園内をうろついているのを複数の人が見ているが、目撃情報は少なく捜査は難航している。

帰宅途中の被害者が何者かにより殺害され、遺体が切断されて井の頭公園内に遺棄されていた、という、社会に衝撃を与えた事件でしたが、間もなく時効を迎えようとしているんですね。
日本警察の捜査力の低下を感じるとともに、時効が成立して殺され損にならないよう、各自が十分注意しなければならないということを感じます。これでは、重大事件で犯人が捕まえられず言い訳ばかりがうまくなる「言い訳警察」と言われても仕方がないでしょう。
公訴時効について、廃止等の見直しが検討されていますが、時効を迎えてしまう多くの重大事件で、警察は、数年間程度捜査をやって犯人が検挙できないと、記録をロッカーに放り込んでしまい、事実上、時効成立まで捜査を放棄しているのが現状で、捜査体制の強化ということを行わないと、いくら時効を撤廃したりしても、永遠に事件が放置されるだけのことになってしまいかねません。

刑事訴訟法講義(第3版)

刑事訴訟法講義

刑事訴訟法講義

最新版が出たので、早速買いました。
ざっと見たところ、「第1章Ⅳ 犯罪被害者への配慮」が新たに書き加えられ、裁判例は、第2版で平成17年11月までのものが掲載されていたのが、同月以降、平成20年9月までのものが新たに掲載されていました。
本書については、以前、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20041212#1102822652
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20040917#1095355683
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20040701#p2

でコメントしたように、理論的に物足りないところや、現行の実務に対する反省という視点が希薄であることなど、短所はあるものの、法学部生や法科大学院生が、他で補充することを前提に基本書として使用するには適しており、私としては、そういった意味で推薦できる1冊ではないかと今でも考えています。

新・少年事件実務ガイド 第2版

新・少年事件実務ガイド 第2版

新・少年事件実務ガイド 第2版

私は、少年事件は時々しかやりませんが、やるときもあり、そもそも興味は強いので、先日、この本を見かけて買いました。類書としては

少年事件付添人マニュアル―少年のパートナーとして

少年事件付添人マニュアル―少年のパートナーとして

があり、これの旧版は以前から持っていて、少年事件を担当した際には、必要に応じて読み参考にしてきましたが、もう1冊あったほうがより便利かと思って購入しました。
「ガイド」のほうはQアンドA方式になっているので、求めている答をすぐに引き出しやすく、書いてある内容も堅実で(全部読んでいませんが拾い読みした限り)、役立ちそうです。
少年事件の分野は、法律も制度も変わってきていて、昔の常識が通用しなくなっている面があり、こういった最新の書籍を手元に置き必要に応じて参照することは、事件を担当する弁護士としては不可欠でしょう。

<旧吉田邸全焼>無残、戦後史の証人 歴代首相「大磯詣で」

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090322-00000064-mai-soci

ゆかりの各国元首らから贈られた貴重な調度品も失われたとみられる。県内では近年、歴史的建造物の焼失が相次いでおり、防火の難しさも浮き彫りにした。

建物内部にあった由緒ある物も焼失してしまった、とのことで、残念と言うしかないですね。こういった火災を想定し、歴史的建造物内の貴重品は、せめて防火体制が完備した場所で保管、展示するといったことも真剣に検討される必要があるでしょう。
この火災の原因はよくわかりませんが、どうも、放火ではないかと推測される不審火が、特に歴史的建造物、有名な建物に相次いでいるようです。不心得者がいる、ということを想定し、お金がかかっても警備体制を強化する、ということが、やはり必要ではないかという印象を強く受けざるを得ません。