「土葬の村」

 

現在の日本では、亡くなった人はほとんど火葬されますが、本書では、最近まで土葬の風習が残っていた地域での葬送の様子や、風葬など他の葬送をしていた地域での様子などを、実際の取材に基づいて紹介していて、葬儀会社による画一化された葬送になる前の多様な葬送の在り方がわかり、おもしろく参考になる内容でした。

読んでいて思い出したのが、私の広島の実家でも、子供の頃、地域の山中に、親が「かつてはここに火葬場があった」と言っている場所があって、私が子供の頃に学校の遠足か何かでその前を通りかかった当時、既に使われなくなっていたことでした。朽ちかけた小屋のようなものを見たような記憶もあり、本書で紹介されているような、地域の人々が遺体を時間をかけて火葬にしていく、そういう場所であったのかもしれません。昭和30年代以降、日本各地にあったそういった場所が急速に使われなくなったと本書では紹介されていて、私が見たのは、使われなくなってまだそれほど経っていないものだったのかもしれないと思いました。

こういった昔の風習は、記録がないと急速に人々の記憶から消えていくはずで、その意味でも貴重な記録でしょう。