「千利休 切腹と晩年の真実(朝日選書)」

 

千利休 切腹と晩年の真実 (朝日新書)

千利休 切腹と晩年の真実 (朝日新書)

 

 千利休切腹していなかった、とする著者の説に興味を感じて、昨年、Kindleで落としていたのを最近になって通読してみました。

確かに、一次史料では、千利休が「逐電した」とするものはあっても、明確に切腹を裏付けるものはないようであり(あっても伝聞程度)、また、豊臣秀吉名護屋在住時に(千利休切腹した後の時期)、利久の茶を飲んだなどと手紙に書いていて、生存説を排除するのは難しいと感じました。

ただ、千利休が生存していれば、豊臣家関係者など少数ではあっても一定の範囲で、その事実は共有されていたはずであり、豊臣秀吉が死亡し徳川幕府の世になって、ごく断片的な二次史料でしか生存を窺わせる記事がないというのも、もし本当に生存していたのであれば、あり得ないようにも思われます。

今後、何らかの新たな史料が出てくることで、切腹、生存のいずれかが裏付けられるのかもしれません。

また、千利休による利久流の茶というものが、江戸期になって、理想を追う形で形成されていった、しかし、実際に千利休が存在した当時に本当にそういう茶だったかどうかはわからないのではないかという著者の指摘には(国宝になっている待庵が利久の手によるかどうかも含め)、説得力を感じました。

私自身、単なる門外漢ですが、今後もこの分野には興味、関心を持ち読書をしてみたいと考えています。