「真田信繁 幸村と呼ばれた男の真実」

 

2016年にNHK大河ドラマ真田丸」が放映されていた当時にKindleで落としていたのですが、読めないままでいたのを、最近、大坂城関係の本を立て続けに読んでいて、これも読みたくなり通読しました。結構、読み応えのある本でしたが、頑張って最後まで読みました。

著者は、あとがきで、執筆にあたって1年以上をかけて各種史料を丹念に読み込んだと述べていて、その成果が本書の随所に出ていることを感じました。特に、大坂冬の陣、夏の陣の描写は、私が今まで読んだ中では最も詳しく、リアルなもので、最後の夏の陣については、徳川方が決して勝つべくして勝ったわけではなく、統制不足、経験不足の将兵による多大な混乱の中、一時は徳川家康本陣が突き崩され家康本人が切腹を覚悟するほど追い詰められていた、その状況がよく理解できました。

また、徳川家康が、豊臣家を滅亡させるため数々の手を次々と打っていったように語られがちですが、本書では、史料に基づきつつ、決してそうではなく、家康が、豊臣家の大坂退去、国替えにより一大名として存続させることを最後まで考えていたことが実証的に語られていて、かなりの説得力を感じました。家康としては、室町幕府→織田政権→豊臣政権→徳川幕府と権力が移行する中で、新権力が旧権力を根絶やしにしたことはなく、新権力の中でそれに包摂されて生き延びてきたことが念頭にあって、そういった前例踏襲を意識しながら動いていたというのは、大いにあり得ることだと感じられました。

ただ、著者も指摘するように、大坂の陣当時の豊臣方には、膨大な浪人が所領、恩賞を求めて集結していて、結局は、そういった浪人をコントロールできず引きずられてしまった豊臣方が、平和のうちに存続する道を自ら閉ざしてしまった、そのことを強く感じさせられました。

少し遅くなりましたが、読めて良かったと感じています。