“患者にわいせつ”男性医師に無罪判決 東京地裁

“患者にわいせつ”男性医師に無罪判決 東京地裁(TOKYO MX) - Yahoo!ニュース

2月20日の判決で、東京地裁は男性医師に無罪を言い渡しました。判決理由大川隆男裁判長は「女性は麻酔から覚めた際のせん妄(幻覚)の影響を受けていた可能性があることなどから、証言の信用性に疑問を差し挟むことができる」とし、さらに、検察側が証拠の決め手としていた女性の胸から男性医師のDNAが検出されたことについて「証明力は十分なものとはいえない」と指摘しました。

 私は報道しか見ていないのですが、報道を見る限り、検察官が重視した証拠は、被害者の胸部のDNA検出という点で、通常の医療行為では考えられない、わいせつ行為によるものと判断される付着があったと判断していたようです。

しかし、そうであるならば、その点に関する鑑定は、後に疑問を持たれない、また、再検証可能なものであるべきで、重大な疑問が持たれ再検証もできない(鑑定資料が廃棄されて)では、裁判所に有罪判決は書いてもらえないだろう、という印象を受けました。

そういう、一見、決定的に見える裏付け証拠というものが実は裏付けにならないということは起こり得ます。例えば、殺人の犯行現場から指紋が検出され、それが特定の人物のものであると判明しても、犯行前後に犯行とは無関係にその場を訪れた際のものである可能性があれば、裏付けにはなりません。

そういう意味で、判決でも指摘されているようなせん妄(幻覚)の可能性も視野に入れつつ、どれだけの慎重な捜査が行われたのか、疑問が次々と湧いてきますし、こういう判決が出るようでは、特に検察庁の事件に対する見方、考え方や判断力に深刻な疑いが生じかねず、他の事件の捜査、公判にも影響が出かねないと懸念されるものがあります。

今後、この事件が無罪で確定した場合、捜査、公判の在り方について、検察内部で検証、反省して、その結果が共有されなければならないでしょう。

そういうことをきちんとやっておかないと、同じ誤りの繰り返しになりかねません。