200m離れた駐車場からドローン飛ばす

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150427/k10010062041000.html

総理大臣官邸の屋上で、無人機のドローンが見つかった事件で、逮捕された男がおよそ200メートル離れた駐車場からドローンを飛ばして官邸の庭に着陸させようとしていたことが分かりました。
男は操縦に失敗したとしていますが、結果的に官邸の敷地内には侵入させており、警視庁は警備対策を検討するとともに飛行経路をさらに調べています。

業務妨害罪では、虚偽の風説の流布、偽計、あるいは威力により他人の業務を妨害する行為が処罰されていますが、本件で問題となるのは「威力」による業務妨害で、威力とは人の意思を制圧するに足りる勢力を使用することであるとされています。
業務妨害は、実際に妨害結果が発生しなくても、妨害の結果を発生するおそれのある行為をすれば足りるとするのが判例で、「おそれ」についてどの程度のものを要求するか争いがありますが、実務上は、まったくの抽象的なおそれ(危険)があれば立件、起訴されるという運用はされていなくて、ある程度具体性、実現性のあるおそれがあって初めて立件され、その内容により起訴もされ有罪になる、というのが実情でしょう。
ドローンが飛んで官邸の庭に着陸することによる業務妨害の危険性をどう見るか、ですが、変なものが飛んできて、あれは何だ、どうした、などと官邸関係者が驚いたり対応に走るなどすることは現実的な可能性としてあって、実際には屋上に落ちていてしばらく誰も気づいていなかったとしても、一応の、そういう可能性はなかったとは言えないと思います。ただ、それをもって「業務妨害」のおそれと見るかどうかとなると、果たしてどうであろうかという印象は受けます。そういう論法で言い始めると、官邸の上で凧揚げしていて凧が官邸の庭に落ちたら業務妨害なのか、とか、限界事例はいろいろと出てきそうです。
なお、一部報道によると、ドローンに発煙筒や発火装置が仕掛けられていたのではないか、という見方もあるようで、そういった事情が実際にあれば、業務妨害のおそれはより肯定されるほうへと振れてくるでしょう。
ドローンがどういう仕組みになっていたのか、それを被疑者がどのように使うつもりであり、実際に何をしたのかといった全容が解明されないと、犯罪の成否の評価も難しい気がします。ただ、業務妨害罪が明らかに、疑うべくもなく成立するか、と言われると、果たしてどうなのだろうかという素朴な疑問は感じます。