AIJ:社長に懲役15年求刑 企業年金消失事件

http://mainichi.jp/select/news/20130702k0000e040200000c.html

検察側は論告で、17被害基金のうち11基金が事件を機に解散を検討していることを明らかにし「資金運用に苦労している基金を食い物にすべく、執拗(しつよう)にだまし続けた。我が国の厚生年金基金制度を崩壊させた」と非難。「犯行は収入や立場を維持するためで、酌量の余地は皆無」と述べた。

起訴状によると、3人は2009〜12年、年金基金に虚偽の運用実績を示し、水増し価格でファンドの権利を販売。総額約248億円をだまし取ったとされる。

起訴されている罪の中で、最も重いものが詐欺のようですが、そうすると、複数の罪について、併合罪加重しても、詐欺罪の法定刑の上限である懲役10年の1.5倍の懲役15年が、処断刑の上限になります。おそらく、処断刑の上限での求刑だったのでしょう。被害総額約248億円は、史上最高か、それに近いものではないかと思われます。
これだけの巨額の被害が現実に出る、それも、人々の老後を支える年金原資が消失する、ということになると、詐欺罪の、10年以下の懲役という法定刑が、果たして妥当なのか、ということも、今後議論される余地があるように思います。詐欺事件の捜査では、「欺く意思(犯意、故意)」の立証が困難である場合が多くあるものですが、業として(営業として)客観的に他人を欺いていると認められる場合は犯意を推定し、犯意がなかったこと(少なくとも、なかったという合理的な疑いが存在すること)については立証責任を転換して欺いた側が立証することを要する、といったことも、今後、検討する余地があるようにも思います。社会が複雑化する中で、善良な人々が、ただ食い物にされるだけ、という現状については、再考すべき点が多いでしょう。