NHK 大阪地検激怒で「取り調べ可視化」番組を放送延期した

http://news.infoseek.co.jp/article/postseven_190528
http://news.infoseek.co.jp/article/postseven_190528?p=2

『クロ現』の放送が延期されたのは前述の通りだ。しかし関係者によれば、オンエアに待ったをかけたのは検察ではなく、他ならぬNHK内部だったという。NHK関係者が続ける。
NHK東京本社の記者が検察の激怒を知って、上層部に進言したそうです。『証拠DVDを再度放送すれば番組関係者が検察に捜査される可能性もある』として、番組中止を訴えた。当局にすり寄る記者連中と、それに反発するディレクターの対立というのはNHKではよくある構図ですが、今回はあまりにもひどい」

近年、刑事訴訟法にはいろいろな改正がありましたが、その中で、開示証拠の目的外使用の禁止、も新たに追加されました。

第281条の4
1 被告人若しくは弁護人(第440条に規定する弁護人を含む。)又はこれらであつた者は、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等を、次に掲げる手続又はその準備に使用する目的以外の目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供してはならない。
一  当該被告事件の審理その他の当該被告事件に係る裁判のための審理
二  当該被告事件に関する次に掲げる手続
(以下略)
第281条の5
1 被告人又は被告人であつた者が、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等を、前条第1項各号に掲げる手続又はその準備に使用する目的以外の目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供したときは、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
2 弁護人(第440条に規定する弁護人を含む。以下この項において同じ。)又は弁護人であつた者が、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等を、対価として財産上の利益その他の利益を得る目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供したときも、前項と同様とする。

こういう規定がありますから、マスコミが被告人や弁護人から証拠の交付、提示、提供を受けると、提供した側には罰則規定があり、提供側だけでなくマスコミ側も捜査対象になってくる可能性はあります。NHKとしては、そういった事態を懸念して、上記のようなことになったのではないかと思います。
問題は、証拠が暴力団横流しされるような、明らかにあってはならない事態とは異なり、上記のような、刑事司法の問題を真面目に取り上げる目的での証拠へのアクセスも、上記の規定では禁じられてしまうことです。既に判決が確定した事件では、審理に影響を及ぼすことはないわけですし、プライバシー等の保護も、証拠へのアクセスを一切禁止する以外に適切に保護する手段はあると思います。
上記の規定は、立法当時から、こうした事態が懸念され、批判がかなり強い中、成立してしまった経緯がありますが、現状では、検察庁の在り方や姿勢、捜査や公判立証への批判を刑罰の威嚇をもって封じ込め正当な言論活動を困難にする、一種の「弾圧」に便利に使われてしまう規定と化してしまっていると言えるでしょう。正当な目的による提供等を許容するよう、改正が必要であると思います。
ちなみに、以前、

調書の講義使用は「不可」 検察庁法科大学院が対立
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20061105#1162656125

でコメントしたように、検察庁は、上記の規定をかなり杓子定規に適用して様々な圧力をかけてきますから、今後も要注意です。