弁護側、被告人質問せず 上田被告黙秘意向

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tottori/news/20121025-OYT8T01386.htm

被告人質問を行わない理由として、弁護側は「現時点の証拠だけで、弁護人が求める結論を得るには十分。質問を行う必要はない」とコメント。一方、検察側は報道陣の取材に「公判前整理手続きで、検察側の証拠や立証方針を伝えたうえ、弁護側も同意して被告人質問を含む審理計画が作成された。この段階での取り消しが、どういう意図なのか明らかにする必要がある」として、被告人質問を行う意義を強調した。

元検事の落合洋司弁護士は、裁判員裁判においては極めて珍しいケースだと指摘。「被告人質問を行えば、検察側は被告にとって痛い点や矛盾点をついてくる。被告が語ることで、不自然さや不合理さが出てしまうリスクもあり、そうしたマイナス面が顕在化することを防ぐための判断とも考えられる」と分析する。

こういった、難しい否認事件では、被告人質問に、裁判所、裁判員の注目が大きく集まることになります。被告人が説得的に、裁判所、裁判員の心を有利な方向へ動かすことが出来れば成功ですが、検察官に追及され言葉に詰まったり矛盾を露呈したりすれば、逆に、心証を害して失敗することになりかねません。ここで語るべきか、語らざるべきかは、全体の証拠構造や立証の程度を見た上で、被告人、弁護人が決断する必要があって、上記のコメントで私自身も触れているようなマイナス面、リスクも考慮した上での、黙秘という選択だったのでしょう。
「語らないこと」自体を、被告人に不利益に考慮できない、というのが、黙秘権保障を考慮した、現在の刑事裁判実務の考え方ですが、証拠評価にあたり、「語らなかったこと」が微妙な影響を及ぼす可能性までは排除できない面があります。そのあたりは、なかなか微妙なものがあると思います。
この選択が吉と出るか凶と出るかは、今後の判決で明らかになります。