- 作者: 金谷治
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2000/04/14
- メディア: 文庫
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参加している勉強会(1月に1回集まって、予め指定された「名著」について担当者が発表し議論という方法)での、今月の課題図書が、この孫子であるため、先月から読み始め、通読しました。前から、部分的には読んでいたのですが、最初から最後まで通読するのは初めてで、孫子を通読したという達成感?(と言っても岩波文庫で200ページ弱という分量ですが)がありました。
自分なりに、極めてざっくりと読後感をまとめてみると、
1 自己を絶対視せず、あくまで敵との関係で相対的に捉え、様々な観点から「勝機」を見出そうとする相対的、多面的な方法論
2 勝機を見出すため、「敵を知り己を知る」という有名な言葉に現れているように情報を重視しつつ、戦闘行為すら避けるべきものと捉え、勝利という目的のためにはあらゆる手段を駆使すべきとする冷徹な戦術、戦略観
3 「君命に受けざる所あり」といった言葉に象徴的に現れているような、君主と将軍(孫子が想定する軍事指導者)との関係を絶対的な上命下服の関係とは捉えず、将軍に一定の裁量を認め勝利のためには指揮命令に従わない場合もあり得るという、現実的であり、かつ危険もある指揮命令についての考え方
が印象的でした。
古今東西のあらゆる戦いの多くは、戦力にそれほど差がない、勝ちも負けもする者同士で争われることが多く、そうであるからこそ、敵との関係を相対的に捉え、英知を振り絞って勝機を見出した上でそこに限られた戦力を集中して勝利を目指す、という孫子の考え方は、昔から広く受け入れられてきたものと言えるでしょう。今後も、その指導的な地位を維持し続けるものと思われます。
ただ、上記の3のような、独断専行、暴走を生むような危険なところもあって、使い方には注意が必要なところもある、ということは感じるものがありました。